第2話 僕の浮気相手
side S
明日は両親が家に迎えに来るから、家までは一緒に帰れない。と言われた僕は玄関で年内最後のキスをしていた。彼女とは知り合って間もない。正直、会話した時間よりも長くキスをしている。スキンシップが好きなんだな。と思うくらいには、どこか気持ちが冷めていて、他人事である。
「初めてこんなに人を好きになった」という言葉を、よく言われる。
言われ過ぎて、恋する女の子の挨拶くらいに受け止めている。むしろ、この子も同じ事を言ったな。と笑えてくる。だが、彼女達の眼は真剣で本気だ。あぁこの子なら僕を地獄から救い出してくれるのか…といつも他力本願で恋愛のスタートを切ってしまう。もちろんうまく行かない。
理由は明白で、僕が他の人を好きになってしまうからだ。
普通に生きているだけで、こちらから何もしなくても、定期的に僕のことを好きな女性が、【まだ】現れる。
久しぶりにカクヨムを開いて過去作に目を通した。何十年間同じ事をやっているんだろうと嫌気がさした。今だってそうだ。幸福論に書いてある脚本を別のヒロインで演じているだけである。
恋人がいる人を好きになってごめんなさい。と声をあげて泣いていた。彼女なりに罪悪感があり、背負ってしまったものがあるのだろう。
僕はどうだろう。11歳年下の恋人と半年ほど同棲をしている。生活には全く不満がなく、このまま結婚とかするんだろうかと思っていた。
そんな中、7歳年下の同僚に告白された。最初は酔った勢いだろうし、何なら覚えていないだろうくらいに思っていたが、どうやら本気だったらしい。
告白された僕が一番最初に思ったことは、恋人と別れるのが面倒だな。だった。
次に、同棲の解消、家探し、引っ越し、仲良くしてくれていた居酒屋にももう行けないな。と思った。恋愛をしてはいけない人間の思考だと思う。
AIに問いかけてみると、恋人と関係がうまくいっている人は告白されても断ることが出きると答えてくれた。なるほど、僕の選択肢には「断る」が一切なかった。どうやら、うまくいっていなかったらしい。そうなってくると、また同じことを繰り返してしまう。
「初めてこんなに人を好きになった」という言葉を、よく言われる。
僕もいつか言ってみたい。
私たちの自由と選択 はやい @ROMP9
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私たちの自由と選択の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます