クソさこ

ツヨシ

第1話

子供の頃、毎年夏休みに、じいちゃんの家に泊まりに行っていた。

かなりの田舎だが、自然が好きな僕は、行くのを楽しみにしていた。


ある夏、じいちゃんの家に泊まりに行った時のことだ。

ふと、隣の家に誰もいないことに気づいた。

留守とかそんな感じではなく、誰も住んでいないと言った様子なのだ。

じいちゃんの村は全部で十数軒ほどの家があるが、みなばらばらに建っていて、隣り合っているのはこの二軒だけだ。

僕はじいちゃんに聞いてみた。

「ああ、クソさこは、もういないわ」

――クソさこ?

確かにそう言った。

どういう意味だ。

僕は考えた。

隣の家は大迫桑子と言う人が一人で住んでいた。

その大迫のさこと、悪口によく使われるクソが合体したのだろうか。

大迫桑子と言う人は三十代くらいの女の人で、割と大きな家に一人で住んでいたが、確かに子供の僕が見ても見るからに印象が悪かった。

まず体がでかく、女なのに身長が百八十センチ近くあった。

その上身体が筋肉質でいかつく、その筋肉の上に脂肪が上乗せしていた。

声は女にしては低く、そして目つきも態度も口も悪かった。

初めて会った二年前、まだ七歳の僕に対して「貧相でつまらんガキが来やがった。帰れクソガキ!」と言ったのだ。

じいちゃんに言うと、じいちゃんは隣に押しかけて文句を言った。

そして激しい言い合いになったのを、僕は見た。

どうやら村中で嫌われているようだった。

顔だけは体つきとは反比例するかのように、小顔でなかなかの美人だったのだが。

「一番いかんのは、なんといっても山で悪さをすることじゃな」

じいちゃんが言うには、村のすぐ北にある山に猟銃を持って入り、そこの熊とか猿を撃ち殺しているようなのだ。

山は国有林で狩猟は許可されていないにもかかわらず。

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