第2話 人生何が起こるか分からない
「お前、その耳!!」
「ご主人さま、おどろきすぎです」
しかもお前、素っ裸じゃねえか!
「一体お前何者だ?どっから入った!?」
猫耳少女は不思議そうに首をかしげる。
「ご主人さま…?ご主人さまが付けてくれた名前なのに、おぼえてないのですか?」
少女はちょっと困った顔になった。
ご主人さま…? 俺が名付けた…?
まさかお前…!!
「シロネコ…なのか?」
シロネコはニマっと笑って
「はい!!ご主人さま!シロネコです、にゃ」
しっぽをふりふりして、招き猫のように右手をくいっとしてそう答えた。
「…とりあえずお前、服を着てもらうぞ。こんなクソ寒い中で素っ裸はダメだ」
ガチャ、急に部屋の扉が開いた。
「もー翔うるさいじゃないの、おかげで目が覚めた…って、え!?何その子!!素っ裸!」
ボーイッシュな黒髪、妹の
「莉子、とりあえず落ち着いて聞いてくれ、この子は…」
「誘拐してきたの?」
「にゃ?」
想像通りの答え方っ!そして誘拐というワードに反応するなシロネコよ…
「犯罪じゃねえか!そんなことしねえよ!!」
莉子は俺を訝しむ顔になった。
「じゃあこの子は何なのよ?…ってこの子、尻尾が生えてるじゃない!」
「…気づいたか?コイツは昨日拾った猫、シロネコだぜ?」
莉子は訝しんでいた顔を一気に驚きへと変えた。
「っ!!猫が…人になったって言うの?」
「はい!…わたしは昨日ご主人さまに助けていただいた猫、シロネコです、にゃ」
シロネコは得意げに答え、耳をぴょこぴょこさせる。
「ああ、どうやらそうらしいぞ」
「うそ…信じられない…」
俺だって信じられない。
「…」
「まあお前がそう思うのも仕方な…」
「やったー!私にも可愛い妹ができたー!」
俺の言葉を遮って莉子がはしゃぎ出した。
切り替え早っ!てか、
「思うことそれかよ、もっと考えることあるだろ」
「考えることって?」
「ほら、”どうやって人になったか”、とか”猫耳ってどうやって動かすか”とか…」
「後半のは翔の趣味だと思うけど…」
「ぅん?ご主人さま、わたしの耳が気になるんですか?」
ぴょこん!と猫耳を動かしてシロネコが反応する。よく見るとふわふわしててちょこんとしてて確かにかわいいしモフモフしたい気もするが…
「そういえばお前、身体の怪我は大丈夫なのか?大怪我していただろ?」
「!それなら大丈夫です!ほら!」
ガバッ!
「っ!?」
俺を跨いでバンザイして立ったシロネコには1つの傷もついていなかった。白くてきめ細かな肌、小さくて華奢な柔らかそうな身体、サラサラの銀髪、ふわふわの猫耳…その全てが見晴らせ…
「ってバカバカ!怪我は治って良かったが身体の全部見せびらかすヤツがあるか!とりあえず、今は服だ服っ!!」
妹に服を催促するのであった。
—————————————————————
「昨日ご主人さまに助けていただいたシロネコです!よろしくおねがいします!」
母「まあ!あの子猫がこんな可愛い子に?」
父「莉子の小さい時を思い出すよ」
婆さん「こんなこともあるんじゃの…まあこの姿だったらワシは全然構わないが…」
シロネコが自己紹介をしたのち、リビングにいた家族全員に事情を説明した。反応としては、驚きこそはするものの、莉子のようにこの状況をすんなり飲み込んだみたいだ。よくこんなにすんなり飲み込めるな…とは思うけど。
莉子の小学生の頃に着ていた服が奥底に眠っていたらしく、それをシロネコに着せることにした。あいつの整理整頓の苦手さがこんなところで功を奏すとは。
それはそうとして、これからシロネコはどう生活していこう。シロネコは人になってしまった。ゆえに人として生活してくれなければ、俺として、家族としても困る。
「そういえばシロネコ、お前何歳なんだ?」
「うーん…猫で1歳にはなっていません!猫で生まれて7ヶ月くらい…でしょうか?」
人間で言うとまだ12歳とかそれくらいだろう。学校に行かなければならない年齢にはなっている。しかしシロネコを学校に行かせるには問題がある。
まずは猫耳と尻尾。これらがある状態で学校に行くのは怪しいだろう。そして次は学習能力だ。一応会話はできているが、算数とか社会を習ってきたわけじゃない。つまりここで急に学校に行くと周りについていけなくなる恐れがある。最後に、服を着てないことに違和感がない時点で、人間としての社会性の基礎がまだ身についていない。この状態で学校に行くのは危険だ。
母さんはとりあえず人の生活に慣れてもらおうと、うちのお手伝いをシロネコにしてもらうように提案した。俺を含めその他の家族はこれに反対しなかった。
「とりあえず、色々と落ち着くまではシロネコちゃんにはうちのお手伝いをしてもらおうかしら!」
「はい!お母さま!お役に立てるように頑張ります!」
シロネコは猫耳をぴょこぴょこして受け入れた。
まずは基礎の基礎、人間の生活を身につけていってもらおう。
こうして、シロネコはとりあえずうちのお手伝い、実質的にメイドになったのであった。
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