第38話 教授の話
「早速で悪いんだが、高峰君。君の理論はあと少し修正すれば、マナレギュレーターのゲームチェンジャーを生み出せるかもしれない。」
教授は手にした資料を指で軽く叩きながら言葉を続けた。
「これはすごい発見だ。」
玲奈の顔が喜びで明るくなる。教授は軽く頷きながら、テーブルの上に資料を並べ始めた。
「私なりに理論をまとめてみた結果だ。まず、魔力の密度についてだ。」
教授は視線を修に向けた。
「これも私が過去に研究していた分野だ。だが、魔力の密度を自在に操作するという概念は、再現性の困難さから証明には至らなかった。だが、早坂君――君がその魔力を操作する感覚を数値化できるのならば、それをマナレギュレーターにシステムとして実装することで、この理論は実現の筋道が見えてくる。」
教授の目が鋭く光る。その提案に修は少し面食らいながらも返答する。
「つまり、協力すればいいんですね?」
「その通りだ。やってくれるね!」
教授の熱意に押される形で、修は頷いた。
「じゃあ次だ。コスト削減について話そう。」
教授は玲奈の方を見て言葉を続ける。
「現行のマナレギュレーターは、誰が使っても安定して魔法を発動できるように、発動コストの数値を一律に設定している。しかし、これが問題だったんだ。人によって魔力の発動コストは異なる。それを均一化するために、余計なエネルギーを消費している。」
玲奈は教授の言葉に食い入るように聞き入った。
「魔力密度の制御ができるようになれば、個人に合わせた調整が可能になる。そうすれば、現在よりもはるかに低コストでマナレギュレーターを運用できるだろう。そしてこれまでなぜ人によってコストが異なるのかという疑問も解ける!」
「なるほど、それなら――。」
玲奈はその場でいくつかのアイデアを述べ始め、教授もそれに応じる形で議論が進んでいく。
二人の会話は次第に熱を帯び、専門用語が飛び交い始めた。修はその様子を見つめながら、完全に話に入り込む隙間を失い、少し居心地の悪さを感じる。
「そうと決まれば、早速測定に移ろう。」
教授が立ち上がり、隣の部屋に設置された装置の方を指し示した。
「今朝準備しておいた。これで魔力の密度や操作性を測定する。」
修は指示に従い、装置の前に立つ。玲奈と教授は装置の計器やモニターを操作しながら、なおも熱心に話を続けていた。
検査が進む間中、二人の会話は途切れることなく続き、修はただその指示に従うだけだった。
長い測定がようやく終わり、教授は満足げに一つ大きく頷いた。
「これでデータは揃った。明日までには解析してまとめるとしよう。」
そう言うと、教授は疲れを見せるどころか、楽しげに笑みを浮かべた。
「今夜は徹夜だな。」
その無邪気な笑顔に、研究者としての情熱が滲んでいた。だが、その表情はすぐに厳しいものへと変わる。
「さて、次に説明しておきたいことがある。」
教授は手元の書類をめくりながら、声を低め、真剣な口調で言葉を続けた。
「最近、悪魔派閥が活発に動き始めている。裏の情報では、シールド内部にもその影響が及んでいるらしい。」
その言葉に、修と玲奈の表情が引き締まる。教授は書類を指で叩きながら、さらに話を進めた。
「この研究が彼らの関心を引く可能性は非常に高い。だから、このマナレギュレーターの開発に関する情報は極秘事項とする。分かっていると思うが、マナレギュレーターはシールドによって徹底的に管理されている。それほど重要かつ機密性の高いものだ。新モデルの開発などそれ以上の機密だ。」
教授の声には重みがあった。
「奴ら――悪魔派閥は、こちらの研究が悪魔に有効なものになる可能性があると判断すれば、全力で阻止してくる。私の友人である教授も、同じ理由で研究の妨害を受けた。重要情報の関係者として接触してくることが多いらしいから、くれぐれも気を付けてほしい。刺激しないように無視するのが一番だ。」
その言葉を聞き、玲奈と修は真剣な表情で頷いた。
「……外部で口にしないように。」
教授の忠告には、ただの研究を超えた責任とリスクの重さが含まれているように感じられた。
教授は深く息を吐くと、机の上の資料をまとめた。そして、軽く顔を上げ、ふと視線を二人に向けた。
「このことを、もう一人にも伝えておいてくれ。それと、次は必ず来るように。」
教授の指摘に、修と玲奈は同時に頷いた。
教授はさらに書類を整理しながら、少し視線を上げて続ける。
「それと、ここから少し離れた場所に3人分の宿を取っておいた。しばらくはそこで過ごしてもらうことになる。アカデミーのこともあるからな、なるべく早くこの研究をまとめ上げる必要がある。」
「ありがとうございます。場所を教えてもらうと、すぐに向かいます。」
玲奈が冷静に答えると、教授は小さな紙片に宿の住所を書き込んで手渡した。
「必要なものはそこの管理人に頼めばいい。明日は解析結果をもとに次のステップを進める予定だ。今日は十分に休むといい。」
教授の声には、研究への情熱と同時に、二人を気遣う思いも滲んでいた。
修は紙片を手に取りながら、玲奈に目を向けた。
「……本当に徹夜しそうな人だな、教授。」
その言葉に、玲奈は微かに笑みを浮かべる。
「徹夜どころか、明後日の朝まで働き続けるんじゃない?」
二人の軽口を背に、教授は再び資料へと視線を戻し、すでに次の作業に取りかかっていた。
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