第4話 お昼ご飯と卵焼き

 今日はなんと、健康に気……を使わず、今日も今日とてコンビニ弁当で食事を済ませている。


 ちなみに今日は、Wの気分じゃなかったので、クソ甘いカフェオレを飲んでいる。


 苦いコーヒーもいいけど、甘いコーヒーもいいよね。

 ちなみに俺はブラックは飲めない。


 カフェオレの無糖までなら飲めるけど、何も入っていないコーヒーオンリーだとおいしく飲めない。


 なので、俺の中の苦いコーヒーはブラックコーヒーじゃあない。


「ジーー」


 ……またか。

 なんかいやるんだよ。


 もうお前も知ってるだろ。

 見えるんだって。それかなに?誘われ待ち?


 なんか、こんな状況で誘うのなんか癪なんだが……まあいいか……話しかけてやるかあ……。


 みんなで一緒に呼んであげてね。せ~のっ!


「おーい。沙奈~」


「ふぁっ!」


 なんか変な声上げてるよ。


「な、何か用?」


「いや、それはこっちのセリフだろ。何しに来たんだ?」


「……べっ、別にいいじゃない!わたしが何をしに来ようと!」


 なんでわざわざ、ここまで来てそんなことをするのか。

 そんな疑問は心の底にしまった。


「まあ、いいけど……」


「別に、あんたがどうしてもって言うなら、一緒にご飯、食べてあげないこともないけど……」


「え、いや、別に大丈夫だけど……」


 この大丈夫は、「謹んでお断りします」の大丈夫だ。


「なに?私と一緒にご飯を食べるのがそんなに嫌なわけ!?」


 そのまま行くと、もう知らない!という言葉が出てきそうだったので、俺は慌ててさっきの言葉を訂正する。


「いや、別に嫌ってわけじゃないぞ?なんでわざわざ俺と一緒に飯食いに来てんだろって、疑問を持っただけだ」


「……そ、そう。それならいいわ」


 なにがいいんだよ。とは聞かずに、俺は今座っているベンチの隣をべしべしと叩く。

 俺なりの、座れという合図だ。

 もう、どうにかなれ!そんな気持ちも込めて……。


「あ、じゃあ失礼して……」


「んっ」っと、沙奈は妙に色っぽい声を出して座る。

 やめて、意識しちゃうから。


 俺はまだ口のつけていないコンビニ弁当を手に取り、手を合わせる。


「じゃ…いただきます」


「あっ……わたしも、いただきます」


 沙奈はまたもや、「ド」ピンクの弁当箱を開ける。

 本当にピンクだ。

 ここまでの「ド」ピンクはさすがとしか言いようがない。

 もう情熱価格でも何でもないけど、この弁当箱の箱に「ド(情熱価格)」の文字を入れてもいいと思えるぐらいだ。


 それにしても、沙奈の弁当には手作り感がある。

 いいよなあ。そういうの。


 俺も中学までは親に弁当作ってもらってたわ……。

 なんて考えていると、その視線を感じたのか沙奈は、「あ、あげないからね!」と言ってくる。


 ……俺、そんなに物欲しそうな目で見てたか?


「あ、でもちょっとぐらいなら……」と、沙奈は付け足す。

 あげないのか、くれるのかどっちなんだよ。


「……はい」


 沙奈はそう言って卵焼きを押し付けて来る。


「お、おお。ありがとう」

 俺も素直に礼を言う。


 俺もなんかお返し、お返しっと……。

 俺のコンビニ弁当に乗っかってるのは……。


 唐揚げ、と申し訳程度の副菜。

 あと、白飯とその上に乗っかってる梅干しと、黒ゴマ。


 まあ、あれだな。

 無難に唐揚げでも返しておくか。


「ほい。ほらよ」


 俺はそう言い、沙奈の弁当箱に唐揚げを突っ込む。

 沙奈の弁当箱には唐揚げとかは入ってなかったので、大丈夫だろう。


 ……ダイエットとかに気を使ってるんだったらごめんなさいね。


「あ。ありがと……」


 俺の「こだわり唐揚げ弁当。(526円〈税込568円〉)」

「国産丸大豆醤油、生姜、すりおろしリンゴ、昆布エキスなどで二段階に分けて漬け込んだ柔らかくジューシーなから揚げのお弁当です。衣は専門店の様な粉吹き感があり、薄衣に仕上げております」


 だそうだ。説明欄にそう書いてある。

 美味そうだったんだよなあ……。


 いや、な?そろそろコンビニ弁当から脱却しないといけないのはわかってる。

 わかってるんだけどさ……。

 楽なんだよなあ……。それなりに美味いし。


 俺は沙奈からもらった卵焼きを箸でつかんで持ち上げる。


 なぜか、沙奈は固唾をのむような様子で、こちらを凝視している。

 なに?怖いんだけど……。


 というか、食べづらいんだけど……。


 意を決して、俺は沙奈からもらった卵焼きに口をつける。


「……お、美味いな。あれだな。俺が好きなしょっぱい卵焼きだ」


 俺が素直にそう口にすると、心なしか沙奈は嬉しそうだ。


「……………………」


 沈黙が流れる。

 ……なんだろう。黙々と食えって合図なのかな?


 少なくとも、俺はそう受け取り、黙々と唐揚げを食っていた。


「ごちそうさまでした」


 沙奈はそういうと、ベンチから腰を上げ、校舎のほうへと歩いて行った。


 俺のプラスチック製の容器には、まだ食べ物が半分ほど残っていた。


「…………食うの早えな」


 俺はそう、独り言を口にした。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 ……よくやったわたし!

 頑張った!


 よかった……おいしいっていってくれて……。


 まずいって言われたらどうしようかと、気が気じゃなかったし……。


 自然に渡せたよね?卵焼き。

 私が作ったにしてはうまくできたほうだと思うんだけど……。


 もうちょっと、彼の前で素直になれたらいいのに……。


 ……いや、でも!彼と一緒にお昼ご飯を食べるようになったんだから、一歩前進よね。


 私はそう、彼が見えなくなったところで、小さくガッツポーズをとった。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 よし、唐揚げ弁当も食い終えたし、缶コーヒーもカラ。

 俺もまた、腰を上げ、教室へと向かった。

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