ようこそ私立華百合学園へ
なぎさセツナ
第1話 私立華百合学園
私立華百合学園
そこはトランスジェンダーなど性別不一致の者達が通う学園。
全寮制の保育園から大学院までの一貫校にして、中途入学も可能な学校である。
学園の敷地には公園から娯楽施設まであり、一つの街の様相を呈していた。
また、卒業生には大物政治家、財閥、一流企業の創業者、経団連など、国の政治経済の要にも多数進出していた。
差別、偏見の対象という歴史もあり、弾圧された時代もあったが、
今となっては、彼彼女ら無しでは国どころか世界が成り立たないという時代になっていた。
(大間 晶 MtF)
おっはぁ〜、なぎさ。
彼女の名前は大間 晶、小学校からここに通う、なぎさの友達である。
(神流なぎさ MtF)
おはよう、晶。
彼女の名前は神流なぎさ、今年、高校から編入してきた転入生である。
小さい頃から男である事に疑問があったが、親の教育が"男たるも、男らしく"だった為、息苦しさを感じる人生を送っていた。
車には異常なほどの興味があるかと思えば、衣服には男物より女物の方が好きで、よく、"男は損だ!衣服の種類が少ない。
それに比べて女はたくさん種類があって羨ましい"とか、スポーツはできなくはないのだが、料理や手芸をする方が好きで、男の子と遊ぶより、女の子と遊ぶ方が好きだった。
"男は乱暴で品が無い、ガサツだ"といつも言っていたし、
"なんで男で生んだんだ、女で生まれてきたかったのに"と、母親に食ってかかり、
その都度、母親は"女は損だ。だから意地でも男の子を生みたかったんだよ"と慰める日々を過ごしていた。
母親の時代は極端な"男尊女卑"の時代。
"女は結婚して家庭に入り、子供を生んでナンボ。就職は腰掛け程度で婿探し。
女が仕事をするなんて!"
という風潮で、新入社員の最初の仕事は"お茶くみ"と"机拭き"
当然、給料も安い。
年俸なんて、同じ仕事をしても、男の半分もあれば恵まれていた。
"仕事は男の聖域"とまで言われていた時代だからだ。
今では考えられないほど狂った時代だった。
今なんて、"男なんて種馬ぐらいしか役に立たないクズ。"と見下される時代なのに。
それだけ性別不一致と言われる彼彼女らのスペックは素晴らしいものがあった。
まぁ、中には箸にも棒にも掛からないゴミもいるが……
しかし、だからといって、なぎさがひ弱なわけではない。
小学校の頃など、喧嘩三昧の日々を過ごしていた。
しかし、それはガキ大将やそのグループがイジメたりした時に間に入り、助けていたりしていたからだ。
それだけに、1対多数の喧嘩なんてザラだった。
なぎさの喧嘩戦法は、"何でもアリ"
そりゃそうだ、相手は数が多い。手元に武器になりそうな物があれば、ほうきだろうが椅子だろうが机だろうが、何でも使う。
壁、棚、階段も例外ではない。
しかも、自分の居る校舎の構造を熟知しており、誘い込んでは撃破するという頭脳戦を得意にしていた。
だってガキ大将連中ってバカだから。
しかし、教師もクズだった。
常にガキ大将連中の味方になり、一緒になってイジメていた。
"民主主義の原理は多数決だ"と訳の分からない理論を小学生相手に持ち込んで。
いつもガキ大将連中の味方だった。
イジメられてた子が"違う"と言ったところで、
"お前も同じ目に遭いたいのか!"と脅迫までして。
喧嘩が始まれば、追いかけるガキ大将連中に対して"追いかけるな!罠に嵌るぞ!"と加勢し、教室から締め出すなんて普通にあった。
湯川君、荒木さん、忘れると思ったか、クズ教師が!
ただし、学校の成績は学年1位だった為、頭の良い問題児と職員室では"札付き"にされていた。
また、親も少し頭がおかしい。
普通何かあれば助けるもんだ。
ガキ大将連中の親でさえ、"ウチの子が何をしたっていうんですか!ウチの子に限ってそんなことは無い!"
とまくしたてるのに対して、第一声が、
"アンタ、また何をしたんだ!"と、怒鳴る始末。
それだけに、まわり、特に教師から、
"もらい子""拾われた子"と罵られることも多々あった。
ねぇ、湯川君、荒木さん(失笑)
卒業アルバムあるから、実名、フルネームであげてあげようか?遠慮はいらんぞ。
住所も載ってなかったっけ?(笑)
碌に親からの援護もなかった。
"何事も経験"
"自分で考えて乗り切らないと意味がない"
とか、訳のわからない教育方針で。
また、"男たるもの、男らしく"と厳しく言いつけられて育てられた為、この時点で人生に疲れてもいた。
しかも、女の子らしい遊びは全て取り上げられていた為、プラモデル、特に車にのめり込んでいた。
ただ、料理と裁縫に関しては、異常なほど褒めていた。
都合が良いな、おい。
中学に入り、親から"喧嘩禁止、自分の事だけ考えるように"と言い渡されたが、もはやどうでも良くなっていた為、特に反発する気にはならなかった。
親に勧められ部活にも入ったが、"自分の時間が無くなったのが嫌"との理由で、10ヶ月ほどで辞めた。
周りは少々イジメていたらしいが、関心がないので気づいていなかった。
しかし、退部したことで顧問のサボりや嫌がらせ、けし掛けていた教師がバレたらしく、その後、"内申書"という、高校受験に必要な書類や成績評価で"出鱈目を書き、低評価をする。"という復讐に遭う。
これが原因で、公立高校への進学を諦めた。
入試で極端に不利になり、3ランク落とす事になったからだ。
中には"お前みたいな勉強も運動もできるやつが俺は一番嫌いや"
とか
"お前が居るから、私のお気に入りの子がクラストップに成れない!"
と発狂し、5段階評価で3を付けるという差別も受けた。
テスト成績が学年で常に上位3%以内というのが更に輪をかけたのは言うまでもない。
まあ、クラス全員の前でやるもんだから、わかる人は分かる。
また、周りに関心が無いというのが良い方向に働いて、イジメられてる子だろうが、お構い無しに普通に接していた事。
中学の授業レベルなら、結構運動は出来る部類に入っていた事。
元々、簡単な裁縫ぐらいは出来て、ボタンが取れた子のボタンを付けてあげたりしていた事。
勉強で分からないところは丁寧に教えていた事から、女子には少々人気があったことは、卒業まで気づかなかった。
卒業式で、予備や袖ボタンを含め、12個も取られるまでは。
そう言えば、誕生日に300円もするソーイングセットをプレゼントされたり、何故か糸を買うことは一度も無かったなぁ……時々差し入れしてくれてたし。
しかも、常時7色ストックがあった。
針山は4個もあった、手作りと言っていたな。
進路指導で将来の事を聞かれて、
"車が好きだし、どうしてもお金持ちになって悠々自適の生活をして、周りを見返したいから、レーサーになる!
高校は行かない、進路妨害もされているし。成績表の評価を見れば一目瞭然でしょ!"
と言い切ると、
親、担任共々猛反対をされた。
この時の担任は何故か味方で
"進路妨害は一目瞭然だけれど、他教科なので手が出せない"
と認め、謝罪された上、
"頼むから高校は行ってください。それから考えても何か見つかるかもしれないから。
これだけの成績があるのにもったいない。自分が常に上位3%以内にいることは知っているよね、普通じゃ出来ない。
恥ずかしいけど、私はそこまで頭は良くない。それでもなんとかなっているから。"と。
それでも渋ると、
"じゃあ、調べましょう"
となり、自分もできる範囲でしらべた。
で、次回。
担任より、
"調べれる限り調べた。そしたら『人種差別の問題』にたどり着いた。
自国の人間で、言われた頂点にたどり着いた者は居ない。
それは『育った環境というか、社会の問題』だと思う。
まず、某地域では、根強い差別意識がある。だから、言われるようなトップチームからの契約が来ない。
スポンサーも付かない。自国のスポンサーでさえ、某地域人のスポンサーになるぐらいやから。
それと、社会問題というのは、自国では理解が無い。
『暴走族の延長線上の遊び』という認識で、社会的評価が低い。
それがスポンサーが付きにくい理由になっていると思う。
それに、そこまで命を賭ける理由は何?死に急ぐような事をなんでしたいの?
言われた人物を調べたけど、皆んな競技中の事故で死んでいるのに。"
と。
そこがいい。命賭けで栄光を掴み取ると、誰もが羨む生活が待っている。それが出来るかどうかは自分次第。
限界を突き詰めた先に輝かしい未来がある。ただし、見誤れば死ぬ。こんな刺激的な仕事は他には無い。
と言った為に、
"今、ちょうどその映画、えーっと、『グッバイなんとか』だったか『ヒーローなんとか』っていうのが上映されているから観に行こう。私も観たが怖くて最後まで見れなかった。あれ実話?"
と言われ、
実話も何も、そのものです。当時の映像ですから。と話すと固まっていた。
とにかく行こうと、担任と見に行き、そのせいで、俄然やる気に燃えたのには頭を抱えていた。
で、結局は、
"頼むから高校に進学してください。お願いします。気持ちは痛いほど分かった。本気なのも身に染みて理解した。
だけど、この先、何か他の手段で見つかるかもしれない。それと比べたら小さいかもしれないけど……
会社を立てて社長になる手もある。一流企業で重役を目指す方法もある。
安全に金を手に入れる方法がいくらでも見つかる可能性がある。
だから、私の心からのお願いだから、高校に行ってください。お願いします。"
と、土下座された。
そこまでされたら仕方ない。
"高校には行きます"と答えたら、泣いて喜ばれた。
で、どこに行くかとなった時、同じなら自分の生きたいように生きたいとカミングアウトした。
"ひょっとして、それも死に急ぐ原因なの?"
と誤解されたが、担任は心よく賛成した。
逆にチャンスだとも。
"自分の生きたいように生きれるし、名門校で錚々たる卒業生が居る。
かえってその方が夢に近づけるのでは無いか"
と。
そこで意外な反応をしたのが母親である。
自分の育て方の為に、そこまで苦しんで追い詰めていたのかと、最初はびっくりして泣いたが、切り替えが早い。
"帰ったら、早速化粧の練習をする!特訓だ!"
と鼻息荒く理解した。
そんなこんなで名前も改名し、
"神流なぎさ、性別MtF"と正式に登録し、入学をしたのだ。
(渋谷 翔 FtM)
おはよう、お前ら仲良いなぁ〜。
(神流なぎさ MtF)
翔、おはよう。今日もかっこいいなぁ〜(笑)
(渋谷 翔 FtM)
それは言われなくても分かってるよ(笑)
(神流なぎさ MtF)
寝癖ついて靴下も靴も互い違いになってるもんね(爆笑)
(渋谷 翔 FtM)
あっ!……うっさいわ!そういうファッションだ!
(神流なぎさ MtF)
はいはい(大爆笑)
(渋谷 翔 FtM)
笑うな!テメぇ〜犯すぞ!(笑)
(神流なぎさ MtF)
いやぁ〜ん、お兄様♡
(渋谷 翔 FtM)
くそっ!逆効果か(爆笑)
大体連んでいる3人だ。
(神流なぎさ MtF)
でも翔って幸せだよねぇ、青春してるわぁ〜(笑)
(渋谷 翔 FtM)
どういう意味だ?
(大間 晶 MtF)
だってねぇ〜(笑)
(神流なぎさ MtF)
両手に花やん?しかも美少女2人よ!(笑)
(大間 晶 MtF)
周りから見たら、ハーレムだよね(笑)
(渋谷 翔 FtM)
はあぁ?
(神流なぎさ MtF)
ねぇねぇ〜、私と晶、どっち好き(照)
(渋谷 翔 FtM)
どっちも違うわ!あり得ねぇ〜!って、二人とも照れてんじゃねぇ〜よ!(笑)
これが毎朝のルーティンである。
(大間 晶 MtF)
なぎさはどの部に入るんだ?
(神流なぎさ MtF)
えぇ〜、部活入らないとダメぇ?
あまり良い経験が無いから、帰宅部で良いんだけど……
(渋谷 翔 FtM)
何言ってんだ?
部活は楽しいぞ?
高校までくれば、成績はあまり関係ない。
社会で役に立つ経験を積む為だ。
専門の道を極めるなら、高等大学院進学も約束されているじゃないか。
まぁ、専門の道を極めるなら、必要な科目の成績は加味されるがな。
(大間 晶 MtF)
そうそう、中学までは流石に成績が優先されるが、高校以上は関係ないじゃん!
ここを卒業すれば、自動的に大院卒になる。
その為の21年制じゃないか。
途中変更も可能だし、その場合も高等大学院の5年は最低限約束されるから、進路はいくらでも変えられるぞ。
(渋谷 翔 FtM)
仕事が出来れば問題ないがモットーだからな。
まぁ、自主退学をすれば、年数により、高卒、大卒になるが、大抵は卒業するぞ?
就職でも有利だし。
(神流なぎさ MtF)
うーん……
(大間 晶 MtF)
部費はたんまりある。費用は考えなくていいし。
(神流なぎさ MtF)
部活ねぇ……
部活でのルールは"妊娠禁止"
もし在学中に妊娠した場合は系列病院での中絶が義務付けられる。
恋愛は自由だが、経済的に自立するまでは禁止なのだ。
それが嫌なら自主退学するしかない。
その代わり、費用は無料だが、身体の為には芳しくない為、よほどの事でなければ、避妊には気をつけている。
避妊具やピルか支給されている為だ。
(渋谷 翔 FtM)
ほら、部活のリストだ、色々あるぞ。
(神流なぎさ MtF)
うーん……ぶっ!何だこれ(汗)
そこには、ごく普通の運動部や文化部以外に、政治家部、経済部、経営者部、営業部、海外事業部、投資家部、ジャーナリスト部、マスコミ活用及び対策部、芸能界部、プロスポーツ部、コスプレ部、オタク部からちょっとした大人の部活まであった。
大体、SM部がある事には固まった。
(大間 晶 MtF)
ウチには色々な部活があるだろ?楽しいぞ。
(渋谷 翔 FtM)
助っ人も可だから、頼まれて幾つもの部活を掛け持ちする強者もいるし、掛け持ちもOKだけに、好きな部活を掛け持ちするのも居るよ?
部活の為に病気になったり、体調を壊さなければ良いんだから。
まぁ、日本有数の系列病院があるから、心配しなくても良いけどな。
最先端の医療が無料で受けられる。
(大間 晶 MtF)
大体、保健室がその辺の病院より優秀だから、健康は保証されたようなものだよ。
(神流なぎさ MtF)
さ、さいですか(滝汗)
凄ぇ〜な、おい。
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