第二章 悪意のない殺人




フッと考えた。

いくら要らない子でも、まだ幼いかなちゃんを駆除するなんて出来ない。

本当に駆除されるべきは、かなちゃんのパパやママなんだ。

かなちゃんを幸せにするには、悪いパパとママを懲らしめないと。


「ねぇ、かなちゃん。かなちゃんは、パパとママが好き?」


僕の質問に、しばらく考え、かなちゃんは、応えた。


「嫌い……。パパもママも大嫌い。」


「そう……だね。大嫌いだよね。あのね、かなちゃん……。」


僕は、腰を屈めると、かなちゃんの耳元で、こう言った。


「大嫌いで、居なくなればいいという人間は、駆除をしていいんだよ。」


「駆除……?」


「うん、駆除……殺せばいいんだ。」


かなちゃんは、意味が分からず、キョトンとしている。


「あのね、パパとママの背中をあの階段の上から、ポンと押せばいいんだよ。」


僕は、アパートの階段を指差し、そう言った。


「そうしたら、どうなるの?」


あどけない顔で見つめるかなちゃんに、僕は、優しく微笑み、そっと呟いた。


「そうしたら、パパもママも、もう怒らないし、殴ったりしないよ。」


「ほんとー?」


「うん、ほんとさ。パパとママは、夜になると、お酒を飲むでしょ?お酒を飲んで酔っ払ったパパとママに、花火が見えるから出ておいでって、お外で言ってごらん。今日は、町の花火大会だから、パパもママも喜んで花火を見てくれるよ。」


「うん、分かった!」


「その時は、お兄ちゃんも誘ってね。お兄ちゃんも花火が見たいんだ。」


「うん!!」


かなちゃんは、嬉しそうに手を振って、アパートの階段を上って、部屋へ入って行った。


フフフ。今夜が楽しみだね。

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