第10話 魂

 メリーさんは地面に倒れたままでした。

「………………さない………」

 メリーさんの腹からの出血は収まっていました。

「……………ゆるさないわ………エド・ゲイン………」

 メリーさんは立ち上がり、何処かへと歩きました。


 △△△


「くっそ、早く帰らねぇと」

 エドゲインは自分が掘り起こした墓を片付けていました。

「………けど弱かったな……まぁ次来れば返り討ちにすればいいだけか………」

 掘り起こすのに使ったシャベルなどをどんどん片付けていました。折り畳み式のようで折り畳むととても小さくなりました。

「まぁとりあえず出口はあるはず………さっさと逃げよう」

 エドゲインは荷物をまとめ、立ち上がりました。

 そして道を歩き始めました。

 歩いて、歩いて、歩いて、とにかく大きな墓地を歩きました。


「……………………あれ?……」

 道は終わりませんでした。

「はぁ?どうなってんだ?アイツにはナイフを刺してんだぞ?」

 十分程度歩きましたが道はずっと続いていました。

 そしてまたしばらく歩いていると墓地の中心に着きました。

「あ?どうなってんだ?」

 墓地の中心にある石板の上にメリーさんが居ました。

「クッソ!!なんでお前が居るんだよ!!!!さっさとここから出してくれよ!!!もう一回戦っても結果は同じだぞ!!!」

「………」

 メリーさんは黙っていました。

「なぁ!!!出してくれないか!!!!ここからなああぁぁ!!!!!」

「………」

 メリーさんは石板の上から黙ったまま降りました。

「………なんだ……不気味な顔しあがって……」

 メリーさんはエドゲインを睨みつけていました。

「……チッ……クソが………」

 エドゲインは後ろへと走り出しました。しかし"無駄"でした。

「あ?な、なんだこれ?」

 エドゲインが進もうとしていた方向は真っ暗になっており、何かの呻き声が聞こえていました。

「な、なんだ……これ………」

 メリーさんはエドゲインに向かって歩きました。

「ち、近づくんじゃねぇ!!」

 メリーさんはエドゲインの前に立ち、止まりました。

「………あなたは久しぶりに私を本気にさせてくれたわ……」

「な、なんだよ」

「……貴方は不運にも私にとって有利な場所にいたね……」

「………気色わりぃなぁ……」

「………貴方の負けはもう確定したわ……」

「あ?さっきの戦いを覚えてないのか?」

「……………覚えてないわ」

 メリーさんは一歩も動きませんでした。

(………なんだこの感触……気色悪い……)

 エドゲインはそう思いました。

 いつの間にか周りはまたもや暗闇に閉ざされました。しかし先ほどとは違い、何かの呻き声が聞こえます。

「………やってしまいなさい…」

 メリーさんはそう言いました。

 それと同時に何か黒いものがエドゲインに向かって伸びました。

「あぁ!?」

 エドゲインは黒い何かに向かってナイフを振るいました。

 しかしナイフは黒い何かに吸収され、ナイフは無くなりました。

「は?」

 黒い何かはエドゲインの首に伸びていきました。

「なんだ!!!やめろ!!!!」

 エドゲインは動けれませんでした。金縛りです。

 エドゲインは黒い何かに飲み込まれていきました。黒い何かからは腕のようなものが何本も伸びており、それがエドゲインの首などを掴んでいました。

 エドゲインは地面に飲み込まれていきました。

「これは魂たちよ…それもかなり貴方を恨んでる魂……貴方が荒らした墓の人間達の魂よ………」

 エドゲインは言葉を話しませんでした。いや、話せませんでした。

「どう?魂が吸われてゆく、苦しいでしょ?痛いでしょ?」

 メリーさんは笑いました。

 エドゲインは目を見開き、苦しい表情を作りながら地面に飲み込まれて行きました。

「アハハ!こんだけ魂がある墓地で出会ったのがあなたの運の尽きよ!苦しんで死になさい!!」

 エドゲインは魂を吸い尽くされ、死んでいました。

「アハハハハハ!!!」

 メリーさんは笑いました。狂ったように。

「アハハハ………ふぅ………………もう帰っていいよ」

 メリーさんが手を伸ばすと暗い霧が一瞬で晴れました。メリーさんの手の平が一瞬光り、すぐにその光は消えました。

 エドゲインの死体はどこにもありませんでした。

「………………ふぅ………久しく笑ったわね……………」

 メリーさんはエドゲインが居た所の土を踏みしめました。

「………おっと、まだ殺す人がいたね」

 メリーさんには黒い何かが体に纏わりついていました。その状態でメリーさんは歩きました。もう一方のターゲットの所にむけて。


 メリーさんは歩いていました。黒い何かは墓地を出ると消えました。

「………結構近いわね……ここかしら?」

 メリーさんは一つの建物に着きました。メリーさんはその建物の中に入っていきました。

 建物は完全に木製で二階建て、ボロボロで人が住んでるか怪しい程でした。

 建物の二階に上がると一人の女性が地面に膝を付いていました。

 メリーさんはその女性に近づきました。

「………エドゲインを殺してくれたかしら?……」

 女性が言いました。

「ちゃんと殺したわ、安心して」

「よかったわ……私の………子供だけど………それでも人様に迷惑を…かけるよりマシよね……」

 女性の目には涙が溜まっていました。

「………地獄で再開できるといいね」

 メリーさんは銃を取り出し、ターゲットに向かって撃ちました。放たれたのは銃弾ではなく、細い針でした。

「………」

「五分後には楽になるわ……」

 メリーさんは女性の前から姿を消しました。

「………」

 女性はなんとも言えない表情を作りながら涙を落としていました。



「今日もしっかり完了っと……」

 メリーさんは何かを書きまとめていました。何を書いているかは分かりません。

 そしてメリーさんは一瞬だけ何かを考えました。

「……ま、いいや」

 メリーさんは考えることを放棄し、次のターゲットを作るためにまたもやあの公衆電話を目指して歩きました。夜の街にメリーさんの歩く音が響きました。


 △△△


「もしもし、私メリーさん」

 メリーさんはそう言いました。

「殺してほしい人、誰かな?」

 メリーさんは耳を澄まして相手の返答を待ちました。

「………………………ジャックザリッパーを殺してくれないか?」

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