第13話 即席パーティー

「私はそこそこ顔が広い方だけど生ける死者アンデッドの冒険者なんて聞いたことがないわね」

 アイラは上背をいかしてヴィオラを見下ろした。


「顔はでかくてもまともな人付き合いしてないんじゃないですかァ?」

 体格で劣るヴィオラも気迫は負けてはいなかった。



「フン、まぁいいわよ。

 でもね、あなたの話だと皆で話し合いから、いきなりナイフでグサッ。

 ちょっと唐突過ぎる。

 刺したのがエルフの魔術師ってのも気になる。

 その間に何かあったんじゃないの?」


「私がナイフで刺されて転がってたのを見なかったんですか?

 私は被害者です」


「だからなぜ被害者になったのかその過程が問題なの。

 ともかく冒険者組合への報告には、あなたの発言内容には要注意って書くわよ」


「赤毛クソ女、種族ヴァンパイア差別もいい加減にしてください」


「見る目があるってヤツよ。

 ダンジョンで生き残る知恵ね」



「待ってください!」

 俺は大声で止める。


「ご主人様、この赤毛女が虐めるんです」

「エドモン、まさか死体アンデッドの味方する気じゃないでしょうね?」


 違和感は脇に置いておく。


「とりあえず北の通路を確認しよう。

 マッドハウスが解けていればよし。

 解けてなければもう一度と考えよう」


 俺は治癒術師ヒーラーだ。

 治癒術師ヒーラーは現実主義者でなければならない。

 そう習った。

 理屈よりもまずは現実だ。



 俺とアイラとヴィオラの即席パーティーは、北の通路にやって来た。


「私ヴィオラを殺したのはエルフの魔術師です。

 刺された私が言うのだから間違いありません」

 ヴィオラは壁に向かって宣言する。


「壁の様子は変わらずね」


 アイラの言う通りダンジョンの通路の光の壁は変化なし。

 向こう側に行けないことも確認した。

 マッドハウスはまだ終わっていない。



 ヴィオラは復活した。

 しかし殺された後に復活した場合、殺人そのものはどういう扱いになるのか。

 遡及して消えるのか、それとも。


 マッドハウスが解除される条件は何だっけ?

 以前に読んだ本を思い出す。

 確か「殺人犯が特定されること」。


 特定とは具体的にどうすれば良いんだ?


「ヴィオラを刺したエルフの魔術師の名前は?」

 俺は質問した。


「え、そんなのいちいち覚えてません。

 あ、エド様の名前はちゃんと覚えました」


 ……そうですか。



「以前マッドハウスに巻き込まれたことがある身として言うけど」

 アイラはゆっくり話しはじめる。

「その時は、巻き込まれた全員がいる中で殺人犯が誰だか判明した。

 その後マッドハウスが解かれた」



「メイド探偵シャルロットみたいに『犯人はあなた!』をやったのか?」

 俺は愛好家オタク心で質問する。


 えーとメイド探偵シャルロットは超人気小説である。


「流石にそこまで派手じゃなかったけど、生きてる本人を前に特定した。

 本人も認めた。

 ソイツの名前も皆知っていた」


「今回マッドハウスが解かれてないってことは、まだ条件がそろってないってことよ」



「つまり、あのクソエルフはマッドハウスのどこかにいる。

 探して吊るし上げてザマァすれば良いんですね!」


 ……。


「そしてつまりだ。

 とりあえず俺達はこのマッドハウスの中を探索しなければならない」

 俺はまとめた。

 多分間違ってないはず。


 アイラとヴィオラもうなづいた。


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