【完結】ダンジョンで殺人が起きると発生する閉鎖空間に閉じ込められた俺が脱出するまで
ミンミンこおろぎ
第1話 落とし穴と死体
落下は突然だった。
ダンジョンで僕の周りの床が薄く発光し、次の瞬間消滅した。
落下速度をおさえるための風の魔術を発動させる。
が、しょせん気休めだ。
理不尽だ。
ダンジョンの地上一層をウロウロしていただけなのに、なぜこんな目にあうんだ。
グチャっ。
俺は柔らかいモノの上に落っこちた。
落下の衝撃はある。
あちこち痛い。
でも意識はあるし、大きな怪我もしてないようだ。
「……助かったのか?……ヒッっ!!」
俺は人の上に落っこちていた。
「あの、えーと、生きてますか、すみません無理みたいですね」
ヒカリゴケの薄い明かりの下で、俺は俺の下敷きになった死体に話しかけた。
うつ伏せで倒れた死体は、ほっそりした体つきの女性だった。
年は俺と同じ
俺は彼女の肋骨の上に落下したようだ。
背中が大きく凹んでいる。
そして頬は青白く、脈拍はなく、身体はひんやりしている。
彼女は容赦なく死んでいた。
手の施しようがない。
俺は治癒術が使えるが死体には効かない。
落下は事故だ。
ダンジョンの地上一層で、下層までつながる落とし穴ができたなんて聞いたことがない。
俺は偶然落とし穴の上にいただけだ。
俺のせいではない。
ないはずである。
それでも結果は無残だ。
若い女性を下敷きに助かったという事実に、俺はひたすら落ち込み呆然としていた。
どのくらい時間が経っただろうか。
「あなたが犯人ね!!」
突然後ろから厳しい声がした。
僕は振り返る。
赤茶の髪で日に焼けた女冒険者だ。
こっちは生きている。
そして、彼女のハシバミ色の目には俺への敵意と警戒が宿っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます