第9話 かべに耳あり! ソースはあまくちで⁉

 はるか遠くに存在する人間界にんげんかい、その名もヴィスタリア。召喚獣しょうかんじゅうの住まう聖星界せいせいかいアスタリア。それぞれ共存きょうぞんする世界は美しく、人々と聖獣せいじゅうたちのにぎやかな世界だ。

 そんなヴィスタリアに住まう少女ステラ。12歳のステラは、病弱びょうじゃくで部屋から一歩も出たことが無かった。そんなステラのやまいを直したのは、聖獣として自ら現れた召喚獣ブルーであった。


 これはそんな二人がりなす、勇気ゆうき友情ゆうじょう、そして成長せいちょうの物語。


 ◇◇◇


 大きなローザ・ファルベンの町にある学園がくえん、月の光が由来ゆらいのモントシャイン学園は、由緒ゆいしょ正しき伝統校でんとうこうである。

 その伝統校でんとうこう女子寮じょしりょう一室いっしつで、一年生いちねんせいのステラは目覚めざめた。


「ん、ううん……」


 ステラのねむっていたベッドのそばには、つくえがある。きちんと整理整頓せいりせいとんされたほんが並んでおり、そのわきにあるゆりかごの中では、召喚獣ブルーがねむっている。


「ふわわ。ブルー、おはよう。朝だよ」

「むにゃにゃ……」


 ブルーは赤いルビーのような目で、ステラを見上みあげた。


「おはよう、ステラ」

「おはよう。予習したところ、忘れてないか心配だよ」


 ステラは夜遅よるおそくまで、教科書きょうかしょんで勉強べんきょうしていた。ブルーは起きていられずに途中とちゅうねむってしまっていた。心配しんぱいそうなステラをよこに見つつ、ブルーのおなかがぐうぐうった。ブルーのおなかの音がめざましとなり、ステラは早起はやおきすることができるのだ。


「えへへ! おいら、おなかへった……!」

「もう、ブルーってば。着替きがえて準備じゅんび出来できたら、食堂しょくどうにいこうね」


 ブルーはあわててスカーフを首にくと、かがみまえった。まじめな顔をしたり、得意とくいげにして見せると、ブルーはむねった。


「おいら、支度したくおわった! 準備万端じゅんびばんたん!」

「ブルーったら、早いんだから。かおあらったの?」

「まだだった!」


 さらにあわてるブルーに、ステラは笑いながら身支度みじたくわらせた。


 ◇◇◇


 食堂しょくどうはすぐに生徒せいとたちでいっぱいになった。いているせきさがしていると、すぐにこえをかけられた。


「おはよう、ステラちゃんにブルー!」

「おはようございます、ミミィさん、レミィさん」


 ねこのような召喚獣、レミィをしたがえているのは、となりせきのミミィだ。


「今日も早いね」

「ブルーのおなかがなっちゃうの」

「おいら、はらぺこだよー」

「昨日、あんなに食べていたのに。やっぱり大きくなるドラゴンなのかな?」


 ミミィは巨大きょだいなドラゴンをおもかべると、すぐにレミィがつっこみをいれた。


「ブルーはドラゴンじゃないから、大きくはならないと思います」

「おいら、ドラゴンじゃないけれど、でっかくなりたいな!」

「それだけ食べていたら、大きくはなるでしょうね」


 レミィはそれだけいうと、ミルクをはじめた。かわいいにくきゅうですくいあげ、ちょっとずつ飲んでいる。


「レミィはミルクだけでいいのか? 昨日も、ミルクだけだったじゃないか」

「クッキーも食べたわよ」

「クッキー! もしかして、ミミィの手作てづくりか?」

「そうよ」


 ブルーはステラがはこんできたサンドイッチにかぶりつくと、もしゃもしゃと食べ始めた。


「ブルー、そんなに早く食べるとあぶないですよ」

「もがががが」


 慌ててミルクを飲むブルーに、レミィはあきれ顔をしながらミミィを見つめた。ミミィはおしとやかにしながら、ちょっとずつサンドイッチを食べている。


「ミミィさんは優雅ゆうがに食べるのね」

「家がきびしかったから。両親りょうしんとくにね」


 大人おとなびた表情ひょうじょうで、レミィは笑ってみせた。すると、ステラはうらやましそうに、レミィをみつめかえした。


「いいなあ。お父さんとお母さんがいるだけで、うらやましいです」

「ステラちゃん……」


 ミミィはそのときはじめて、ステラの両親がいないことをった。


「おやすみになったら、今度こんどうちへあそびにてよ」

「わあ、うれしい。ありがとうございます、ミミィさん」

「ミミィさんだなんて。ミミィでいいよ」

「じゃあ、ミミィちゃんで……!」


 ミミィはほっぺを赤くしながら、サンドイッチをほおばった。

 ステラもサンドイッチをほおばった。ベーコンからあぶらがにじみ出て、トマトケチャップとソースが絡んだスペシャルソースが口の中であふれていく。


「おいしい!」

「ステラちゃんもブルーみたいにいっぱい食べたほうがいいわ。こんなにせてるもの」

「わたしね、ブルーにうまで、ベッドでねたきりだったのです」

「ええ⁉」


 ミミィだけでなく、レミィもおどろいて目をまんまるにした。ブルーは特にきにすることもなく、2つ目のサンドイッチをほおばった。


「でも、ブルーが来てからは外にも出られるようになりました」

「おいら、ゆうしゅうだからね、もごもご……」


 ブルーは更にサンドイッチをほおばる。ベーコンが口からはみ出るほどの大口おおぐちだ。


「なるほどね。それは使役しえきしたくないって思っちゃう。だって、ブルーは恩人おんじんなんだもの」

「おんじん? 恩人だと、使役できないのか⁉」


 ブルーは心配そうに顔を上げた。ソースでほっぺたが赤茶色あかちゃいろになっている。


「ううん。お友達ともだちだから、使役しなくてもいいの。一緒いっしょにいてくれたらそれでいいのです」

「ええ~」


 ブルーはさらにショックな表情ひょうじょうかべていた。レミィはあきれた顔で、ブルーをみつめかえした。


「私たち召喚獣にとっては、ひとの、召喚士しょうかんしやくに立てたらいいの」

「おいら、役に立ってるのか?」

「うん。いつもそういっているじゃないですか。ブルーがいなきゃ、私は学校なんて来られなかったもの」


 ステラのほほえみに、ブルーはほっぺたをあかくした。


授業じゅぎょうがはじまっちゃう!」


 あわてるステラのあとを、追いかけていくブルー。そして、レミィとミミィを物陰ものかげから見つめていたのはロジャーだった。


「ロジャー様、われわれもいそがないと、授業が」

「わかってるよ」


 白ヘビのワッツをしたえているロジャーは、ステラの両親りょうしんがいないことも、ベッドでたきりだったこともしらなかった。ロジャーはおもしろくないのか、足音あしおとを立てて教室きょうしつはしっていった。


―次回、ステラのことを知ったロジャーはどうするのでしょうか……。―

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