第3話 息子の禁断

 お父さんは真新しいホームドアの脇にそっと花束を置いた。


 駅長さんをはじめ何人もの駅員さんが帽子をとって黙とうしてくれる。


 僕は涙を隠すふりをして、まだ新しい学帽を目深に被る。


 そんな僕の肩にお父さんは手を置いて話してくれる。


「こうやってホームドアも設置できて……お母さんの死もきっと無駄にはならないよ」


「ウチは賠償金払わなくていいの?」


「そんな事、あるもんか!!」


「良かった」


 ホームの照り返しで

 体はドンドン汗ばんで来る。


 あの時、

 僕ので押したオッサンの背中の汗を思い出す。

 の端っこに居たお母さんの事を……『ママ』なんて絶対呼ばない!!


 お母さんがホームから

 きれいに落ちてくれて

 本当に良かった


 なのに僕は……

 自分の中の空虚な部分に茫然としたままで


 それが悔しくて悲しくて

 泣いてしまう


 そんな僕を見たお父さんは勘違いしてくれて

 僕の為に涙を浮かべた。


 良かったねお父さん!

 お父さんも“ジクソーパズル”のオンナの元に走れたのだから。


 それも僕の……


 お母さんへの復讐

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そのベタはメスのはずなのに……金魚鉢の内面に写る自らの姿にフレアリングする 縞間かおる @kurosirokaede

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る