第12話

 「スキルのおかげで戦闘を全くせずに進めるな」


 石レンガで作られたアジトの中を歩きながらそう考える。スキル【インビジブル】【ステルス】により、気配を感じることも目視することもできないようになっている。ただ、存在自体を消せるわけではないので、ぶつかると存在を確認できてしまう。だから、ぶつかんないように気をつけないと。


 しばらく歩いて、檻のある部屋についた。このあたりにアネットさんがいるんじゃないだろうか? 奥に進んでいく。すると人影が見えた。


 アネットさんだ!


 檻の中にアネットさんが閉じ込められている。他にも、何人もの人が檻の中にいる。この人たちが事件に巻き込まれた人だろう。一緒に助けよう。


 しかし、この檻の鍵はどこにあるのだろう。



 少し道を戻って、この部屋の前にいる看守らしき人を見つける。その看守の腰には鍵束がつけられている。でも、そこから直接取るのは危険性が高い。ならばどうしよう。


 そうだ、釣り竿を使おう。




 透明の竿を使って、鍵束に針を引っ掛ける。【コントロール】の能力で細かな位置調整ができる。それで一気に鍵束を釣り上げる!

 うまいこと看守にはばれなかったようだ。急いでアネットさんたちがいる檻に戻る。




 「アネットさん、助けに来ました」


 能力を解除して、声をかける。


 「え、なんでここに琉海さんが。どうやってここに」


 アネットさんは驚いている。他の人達も助けが来たことに驚いているように見える。

 助けるとはいったが、ここまでの人数で抜け出すのは難しいよな。目立つし。なにか策がないか考えるんだ。


 えーと、えーと。


 そうだ。【エクスパンション】の【インビジブル】の説明に「全てが対象になる」って書いてあったよな。もしかしてそれを使えば。


 【インビジブル】


 アネットさんたちに向けて能力を使う。すると、目の前から姿を消してしまった!

 え、なんで、と驚きながら自分も【インビジブル】を使うとアネットさんたちの姿が見えた。

 なるほど、そういうことか。自分以外を対象にすると、自分も消えないと確認できないのか。でも、見えないことは分かった。これで逃げられる!


 「みなさん。スキルで皆さんの姿を見えなくしたので安全に移動できます。ただ、物音はたってしまうので、慎重に動いてください。そして、僕に着いてきてください」


 そう言って、僕は道を戻りだす。後ろを確認するとみんな着いてきている。これなら大丈夫そうだ。



 石レンガの道を歩いていく。












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