【初著書】真実のメモラーレ
みるく奏
プロローグ
―チュンチュン…
「ん…んん…?」
鳥の
「ここ…どこ……?」
10歳くらいに見える少年は、ここで目を覚ました記憶がまるでない。歩いてきた記憶も、何もかもが途切れている。
周りを見渡すと、まさに森の中といった様相で、木々が生い茂り、特に獣道など見当たらないそこは長い年月誰も通っていないことがわかる。
つまり、森のど真ん中にその少年は居た。
どうしてここに?いやいやそれよりも…
―僕は一体誰なんだ?
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
少年はその場で座り込み、自分が誰なのか、どうしてここにいるのか考えていた。
「自分が誰なのか、どうしてここにいるのか全く分からない…けれど、言葉を喋れることだけが救いかも。体には傷とかないけど、逆にそれがおかしいと思うし。例えば僕に親がいて…考えたくないけど捨てられたと仮定してもその親のこともこの場所のこともわからないなんてありえない。」
ポケットの中をまさぐってみると、何か硬いものが触れた。鍵のような形をしているが、確認するよりも先にお腹の虫が鳴いた。
「なにもわからないけど、とりあえずこのままじゃ飢え死にするのがオチだね…。
あわよくば人がいないか町を探しつつ食料を確保して脱出を目標に動こう。」
とても見た目が6歳とは思えない思考と行動力を示す少年は、とりあえずおいしいもの食べたいな…と、見た目相応のことを呟きながら歩きだした。
「まず人と会ったとして自分のことを説明できないんじゃこの先が思いやられるなぁ、とりあえず、名前は後回しにしよう…。まずは、人を探して、食べ物を探さないと…お、これ食べれそう」
そういって見つけたのは実が赤く、小ぶりな野苺のようなものだった。
「いやでも毒かも…うーんでもお腹すいたし…くっ…背に腹は代えられない…!
いっちゃえ!」
そういって目をぎゅっとつぶりながら口に放り込んだ。
「渋ーーーーーッッ!!!」
あまりの渋さにぺっぺっと吐き出してしまった。
「なんだこの渋さ!今まで食べたものの中でこんなに強烈な渋みは初めてだ…まるで口の中が絞めつけられるような…ん?今まで食べたもの…?」
あまりにも渋い野苺のようなものを食べた時、覚えていないはずだがこんなに渋いものは食べたことがないという記憶はあった。
「僕はやっぱり記憶がないだけで今まで普通に生きてきたということ…?」
今更ながらなにか手掛かりはないか、着ている服のポケットをまさぐった。
「これは…なんだろう、鍵…?」
ポケットからでてきたのは先ほどの硬い感触があったもの。
それはなんの変哲もなさそうな金色の鍵だった。
「う~ん、家の鍵…?にしては豪華すぎるよね。」
なにか文字が彫ってあったり、使えそうな宝石がはまっているわけでもない。
「なんのための鍵なん…うっ!」
しかし鍵をもって眺めていると、頭の奥がずきずきと痛みだし、まるでなにかが出口を求めて出たがっているような衝撃が少年を襲う。
あまりの痛みに思わず鍵から手を離した。
「なんだこれ…普通の鍵じゃないのかな…鍵から手を離したら痛みが嘘のように消えたし…」
地面に落ちた鍵は、なんだか自分のことを昔から知っているような不気味な輝きを感じた。
「とりあえず…鍵のことは後で考えるとして、野苺は食べれないことはないしある程度持っていくとして、う~ん、覚えていないことは多すぎるのに物や野菜の名前とかは覚えてるんだよな。」
元々普通に暮らしていなければ一般的な名前の教養などないはずだし、ましてや言語すらもしゃべれるわけがない
「う~ん、一旦人を見つけられたらどのような名前を聞いてから自分の名前を決めよう。浮いた名前だと余計なトラブルになるかもしれないし、その場所で周りの人たちに合った名前を考えたほうが良さそうだね、慎重にいこう。」
そう気を取り直して進んでいると、ふと30mくらい先になにやら白い物体が動いていた。
「なんだろうあれ…ウサギ…?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます