とても情景の美しい物語だと感じました。
文字が、幻想的な光景を思い起こさせてくれるのです。青い鉱石のシャンデリア、水色の鉱石の付いた指輪、白銀の窓、白いテーブルクロス、白と金のティーカップ。白基調の、でも青系統の少し冷たい色を合わせたことでダークさとメルヘンさが同居している。そんなゴシックファンタジーの情景が思い浮かぶのです。
主人公は、エヴァンジェリン城に暮らすふたり。
可憐にドレスを纏う領主フィオレンティアと、そのかたわらに控える、アイスブルーの瞳の従者(執事)ベルです。絵面的にも美しい組み合わせです。
出だしとブロマンスタグでフィオレンティアが男の子であることは明白なのですが、自分は時々、フィオレンティアが男の子であることを忘れてしまいました。性別についての説明はほんの少しに留められ、妖しさすらある二人とその周辺の幻想的な情景が先行したためでしょうか。なので、ブロマンスはちょっと……という方でも抵抗なく読めるかと思います。
かつてエヴァンジェリン城や城下町でおきた「魔女」に纏わるお話はかなりショッキングなお話で、驚かされます。それに加え、エヴァンジェリン城に暮らすふたりはなぜ、ふたりだけで暮らしているのか、年に一度だけ城の外へ出るのかと不思議になります。
この美しい主従は何者なのか。ラストで明かされる事実に、読者は魔女の下り以上の衝撃を受けることでしょう。自分は、「なるほど、出だしの意味そういう意味だったのか!」ってなりました。
本作は谷山浩子という方の『王国』という曲をイメージBGMに執筆されたということで。後で気が付いて視聴したのですが、納得です。とてもピッタリ。何よりも本作、ミュージックビデオを見ているような気分にさせられる空気感があるのです。
お勧めです。
未読の方は、白と青の幻想的な情景の中で織りなされる、不思議な主従の物語を堪能してみてください。