第34話 闇の先に見える光
エクリプスの刃が光を放ち、魔王に向かって突進する。しかし、その一瞬で魔王は一歩も動かず、ただ冷徹な目で俺を見据えていた。
「そんな力で、俺に勝てると思うか?」
その声は重く、響く。魔王の言葉が、まるで俺の全身に呪縛をかけてくるようだった。その言葉を聞いたとき、心の中で恐怖が一瞬よぎった。だが、それを振り払うように、俺は力を込めてエクリプスを振り下ろす。
刃が魔王の防御を打ち破ることなく、空中で光の輪を描きながら弾かれた。無力感が襲い、ふと足元がふらつく。魔王の力がそれほど強大だとは、予想していなかった。
「お前の力では、俺に傷一つつけることはできない」
魔王がゆっくりと歩み寄りながら、俺の顔を覗き込む。漆黒の瞳が、まるで俺の魂そのものを見透かしているようで、冷や汗が背筋を伝う。
「お前の中に眠るその呪い、俺が解き放つことで、全てが終わる。お前自身が、それを望んでいるのだろう?」
その言葉に、心が揺らいだ。確かに、呪いの力が俺を蝕んでいる。それがどれほどの恐ろしい力か、俺は身をもって知っている。それを使いこなすことで、俺は魔王に勝つことができるのだろうか? でも、それが俺の選んだ道でないことは分かっていた。
「お前の力で、俺を止めることができると思うか?」
魔王の低い声が再び響く。俺は顔を歪め、エクリプスを強く握りしめた。
「違う……俺は、俺の力で戦うんだ!」
その時、背後からアリシアの声が響いた。
「ルシエル、あきらめないで!」
その声に、俺はもう一度心を奮い立たせた。アリシアがいる。グラントがいる。俺は一人じゃない。魔王の言葉に惑わされてはいけない。俺が今ここで、どれだけの力を振り絞っても、決して諦めてはいけない。
「アリシア、グラント!」
俺は叫んで振り返ると、二人の顔が見えた。アリシアは瞳に決意を宿し、グラントは力強く拳を握りしめている。
「俺たちは、ルシエルと共に戦う!」
その言葉に、俺は再び胸の奥から熱いものが込み上げてくる。それは、確かにあの時のような恐れや不安ではなかった。むしろ、仲間たちの存在が俺を強くしてくれる。仲間がいるからこそ、俺はどんな試練にも立ち向かえる。
「ありがとう、二人とも」
その感謝の気持ちを込めて、俺はエクリプスを再び魔王に向けて構える。
「今度こそ、終わらせる」
その瞬間、魔王の体が震えた。まるで何かが発動したかのように、闇の力が魔王の周りで渦を巻き始める。そして、その闇が俺に向かって急速に迫ってきた。力の差を感じる一方で、俺はそれを受け止めなければならないと思った。
「そんなもの、俺には通じない!」
俺は再び力を込めてエクリプスを前に突き出す。その刃が闇を切り裂き、魔王の力が少しずつ後退していく。しかし、その代償として、俺の体からどんどん魔力が奪われていくのを感じる。呪いの力が暴走しそうになる。それが、また魔王に繋がろうとしている。
「ルシエル、無理しないで!」
アリシアが叫ぶが、その言葉も俺の耳に届く暇もなく、魔王は再び呪いの力を強制的に引き寄せようとした。
「お前の力を解放し、俺に従え。そうすれば、全ては終わる。お前の苦しみも、消えるのだ」
その声に、俺は必死で抵抗する。
「俺は……俺の意志で生きる!」
再び力を込めてエクリプスを振ると、その刃は魔王の体に食い込んだ。しかし、俺の体は限界を迎え、呪いの力に飲み込まれそうになる。
「もう……ダメか?」
俺は心の中で呟いた。しかし、その時、アリシアの手が俺の肩に触れた。
「ルシエル、まだ諦めないで! あなたは、私たちの希望だから!」
その言葉に、俺の体に熱がみなぎる。それはまるで光のように、俺を包み込み、魔王の力を弾き飛ばすかのようだった。
「お前の力を借りることはできない。だが、俺は俺の力で、全てを終わらせる!」
その瞬間、エクリプスが再び光を放ち、魔王の力を一気に押し返した。魔王の姿が一瞬歪んだかと思うと、闇が弾けるように消え去った。
「な、何……?」
魔王の表情が驚愕に変わる。それを見て、俺は確信した。この戦いが、今まさに決着を迎えようとしていることを。
「終わらせる……」
その声が、今度は俺の内から響き渡る。俺が選んだ道。それが、魔王にとって最も恐ろしいものであったのだろう。
そして、エクリプスの刃が再び魔王に突き刺さる。その瞬間、魔王は何も言わず、最後の力を振り絞って、消え去った。
闇の中に、静けさが訪れる。俺は息を呑み、体が崩れ落ちそうになるのを必死に堪えた。
「ルシエル……」
アリシアとグラントが駆け寄ってくる。彼らの顔に浮かぶのは、安堵と共に少しの哀しみだった。
「ありがとう、俺……」
その言葉が、俺の胸からこみ上げる。仲間がいてくれたからこそ、俺はここまで戦えた。俺の運命を切り開くことができた。
「これで、すべてが終わったんだな」
俺は静かに呟いた。魔王を倒したことで、この世界は少しだけ救われた。しかし、まだ終わりではない。新たな未来が、俺たちを待っている。
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