第35話 手紙の内容は
モーゼズからの手紙の内容は、ノーカの手紙がウェットン家屋敷から銀狼騎士団が回収、無事受け取ったことから始まっいた、概ねウェットン家が関わっていた人身売買に関する報告だった。
ウェットン家屋敷にノーカの手紙があったのは、その手紙が密告ではと疑いウェットン伯爵が手を回して手に入れたのだろう。
確かに、第二騎士団でも情報を隠す暗号はある。だがノーカの手紙は暗号が織り交ぜられた文章でも何でもない、ただの手紙。
別の文章が浮かび上がったとすれば、それは手紙を解析したヤツの想像力の賜物である。
奪われた買い物メモも手紙もフェイク。ウェットン伯爵家が回収するだろうと予想したノーカのちょっとした悪戯。意味ありげに『仕事しろ』なんて書いて第二騎士団長個人宛に送ったのだ、何か隠されているだろうと疑い、ただの各地のグルメ紀行自慢とただの買い物メモを睨みさぞかし悩んだことだ。
ノーカがしたのは、見聞きした事実を第二騎士団子飼いの商人に、買い物の世間話ついでに話しただけ。ウェットン家が人身売買に関わっているとは一言も言っていない。
とはいえ、ちゃんと情報提供の手順通りは踏んでいる。『疑惑』の暗号であるハナズオウは出して、『第二騎士団』に関わる品の買い物。ハナズオウは外国から輸入された花木で、一緒に花木に付いたいわくまで外国から輸入してしまったものだから、珍しい植物を庭に植え自慢するのがステータスの貴族にも不人気、植物コレクションとして王宮の庭の目立たない場所にひっそり咲いているくらい、貴族や、まして平民がその花木を知る者はほぼない。
ハナズオウのいわく、それは――『疑惑』『裏切り』。
因みに、騎士団のような無骨な組織が花――しかも知る者が少ない希少でマイナーな花を暗号にするなんて洒落たことになっているのは、ハナズオウが外国から輸入されてきたばかりのときに王族から見せられ自慢されのを、不穏な謂れがある植物が王宮の庭にあると当時の第二騎士団長に面白がって話したのがそのまま暗号として使われるようになったのだった。その当人が、「鼻水ずるずるみたいな」と適当に誤魔化し花の名前を正く覚えていなかったのだが。情報通の商人が、レイフ国王で言動見た目、存在感きわ立つノーカを知らないはずがなく、疑われることなく素直に情報が第二騎士団にあがった。妖精とは人に見つからないようひっそりと有りたがるものなのだが、エルフとしても規格外。
食べ終わってしまったニンジンシフォンケーキのおかわりに、緑鮮やかな小松菜アイスクリームとお茶を頼む。熱々お茶を一口啜り、アイスクリームを掬って口に入れると口の中に残る熱で、冷たい甘さがとろりと溶ける。アイスクリームなんて百六十年前は存在しなかった。魔法道具が発達しているおかげだ。個人の家で買うには少々高いが、商売屋には普及している。
冷たいアイスクリームと熱いお茶のマリアージュを楽しみつつ、手紙の続きに目を通す。
ノーカが村を去ったあとに起こった、ウェットン伯爵家逮捕劇の内容が書かれていた。罪状が確定され事件解決さたあとだ、知られても問題ないものばかりなので、秘匿事項をうっかり漏らすようなものではない。
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