最終話 旅立ちの時
琴音の高校卒業と、久留美の小学校卒業と、悠斗の幼稚園入園が重なった。
由香も、パン屋さんへのパートに復帰したい旨を、先方へ伝える。
耕造は、要コーポレーションで、製造部長に昇進する。
新たなる沢松家のカタチになってきた。
琴音のアメリカに旅立つ時が、いよいよ、近づいてくる。もう既に、試験に合格した。アメリカは、ペンシルバニアカレッジへ進むことが、決定している。ステイ先も、決まっていて、琴音は、暇を見つけては、国際コールを掛ける。
琴音が、アメリカへ旅立つ日が来た…。
朝、目覚めると、カーテンから明かりが入るいい日だった。窓を開けると青空が広がっている。小鳥たちがさえずり、道を小型トラックが走っていく。星林町は、今日も、始まる。
琴音は、キャリーバッグを持ち、階下へと降りる。もう大抵の荷物は、すでに空輸済みである。本日は、琴音の旅立ちの日。
お父さんが運転する車に、琴音をはじめ、お母さん、久留美、抱っこされた悠斗が乗り込む。日本を午後旅立つので、空港まで、お父さんが、車で送ろうというのだった。
ワゴン車に一家を載せて、高速道路を走る。車内は、皆、イングリッシュで会話がなされている。皆、日常会話のイングリッシュは、マスターしていた。ただ、悠斗は、アップルとか、オレンジとか、片言くらいしか話せない。
途中、パーキングエリアによって、早めのランチを取る。別れの日、旅立ちの日だというのに、みんな笑顔だった。
成田空港に着いて、スマートフォンで、家族写真を撮った。いつものように、耕造が、はしゃいでいる。
みんな、琴音が、アメリカに旅立つのを、喜んでいた。空港ビルのベンチに座っていると、お父さんが、どこからか、アイスクリームを買ってきた。みんなで食べる。
時が来る。琴音は、ゲートを、キャリーバッグを引いて、突き進む。後ろを振り返ると、みんな笑顔で、力いっぱい手を振る。琴音は、
「元気でねー!」
と声をかける。その瞬間、琴音は、少し涙目になる。みんなも、声をそろえて、叫ぶ。
「いってらっしゃい!」
しかし、悠斗は、意味が解らなかったようだった。
END、
エピローグ
完読おめでとうございます。よく、御読みぬなられました。恐らく、大変な労力が必要だったと思います。しかし、あなたは、もう変わっています。もう迷いはないでしょう。そうです。自分の人生は、自分が主役です。やりたいことに情熱を傾ければいい。それが、一番の幸せなことだと思います。どうか、楽しく、生きてくださいませ。
太陽。 トシキ障害者文人 @freeinlife
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