ギャルの装いSS

「あのさ、祈織。ギャルの格好って、もうしないのか?」


 とある日の帰り道、廉司はとあることを思い出し、ふと訊いてみた。


「え? どうして?」


 当然、祈織は怪訝そうに首を傾げる。脈絡がない話題だったので、彼女が疑問に思うのも無理はない。


「いや……別に、特に深い意味はないんだけど」

「……廉司くん、やっぱりギャルが好きなんだ」


 廉司が気まずそうに目を逸らすと、彼女は何か思い至ったようで、どこか不機嫌そうに呟いた。


「ち、ちげーから!」

「どう違うの?」


 慌てて否定したものの、祈織の疑念は晴れず、上目遣いでじっとこちらを見上げた。

 これは困った。珍しく、ちょっと怒っていそうだ。


「……ああいうのも新鮮で良かったっていうか。あと、普通に可愛かったし」

「──!? か、かわっ……!?」

「いや、ちがッ──わ、ないんだけど……」

「…………」


 ぽろりと出た廉司の失言に、祈織が顔を赤くしたまま、黙り込んでしまった。

 しまった。完全にやっちまった。心の声まで漏らしてどうする。

 このまま気まずい沈黙が続くのかと思いきや──


「外では恥ずかしいから……」

「ん?」

「……家でなら、いいよ?」


 帰宅後、清楚系幼馴染が家でこっそりギャル化してくれたので、脳裏にしっかりと焼き付けておいた。


※2024年10月26日、Xにて公開。

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