第60話
〜〜 次の日の朝 〜〜
俺はあの後は寝る事にした。一護兄さんの言葉は気にはなったが別に兄さんのチームのリーダーなら変な大人って訳でも無いし大丈夫だと考えて、取り敢えずいい時間だから寝た…んだが…
「…」
目が覚めたら視界いっぱいの肌色が広がっていた。いや、冗談ではない。昨日は仰向けに寝たし寝相も悪いとは言われた事は無い。だが、現在の俺は視界いっぱいの肌色が見えているし体は横になっているし、いい匂いがするし柔らかいし…って、まさか!?
「んっ…あ、おはよう雄二♪」
「…プハァ、やっぱりお前かモミジ!」
俺は急いで顔を上げると、そこには和服の寝巻きを着崩して俺を自身の胸に抱き寄せながら笑顔のモミジがいた。
「いや、今月何回目だよこの状況!?」
「ふふっ、くすぐったいよ雄二♡」
俺は体を動かして離れようとするがモミジは離れない。
モミジ達狐人族は俺のダンジョン攻略の後に日本政府から保護を受けて現在は目黒区に住んでいる…のだかコイツは稀にそこから抜け出して俺の部屋に侵入してこうしてくる。最低は月一、多くて週一。今回はどうやら週一の場合らしい。
「それに今月は皆とダンジョンに行って500人分の生活費を稼ぐ時に恋人のエネルギーを使い過ぎたんだ、だから雄二に抱きつかないと消費スピードが早すぎて貯蓄分がスッカラカランなんだよ…だから…ね♪」
「クソ、絶妙に断りずらい言い訳をしやがって…」
いつもならただ会いたいってだけで突貫してくるんだが…どうやら今回は何回かあった500人の生活費を稼ぐ為にこうして来たらしい。
「働かざる者食うべからず」という言葉がある様にモミジ達狐人族の皆様もまた日本で仕事をしている。農業だったり鍛治だったりと様々な方法でお金を稼いで生活しているが、最大の稼ぎはやはりダンジョン攻略だ。モミジを筆頭に何十人という狐人族だけの巨大なパーティを作り、ダンジョンでモンスターや魔道具を手にして稼いでいる。だからモミジの
「…お前、いつから抱きついて寝ていた?」
「朝の5時から」
「なら今は何時だ?」
「朝の9時だね」
「学校に遅刻確定じゃないか!」
今日は平日で学校があるのに突撃してきやがったから学校に遅刻が確定したじゃないか。流石にビックリしたよマジで。
「なら、せっかくだし今日はサボろうよ♪明日には六本木のダンジョンに行くからエネルギーは幾らでも欲しいしね♡」
「また断りずらい理由を…!」
だが、モミジにはこれは想定内だったらしく可愛い笑顔と俺の腰に尻尾を巻きつけながら誘う様に断りずらいお願いをしてきやがる。俺的にはそれなら仕方がないと割り切りたいが、俺は中学3年生で今は受験シーズンだか…ら…?
「なあ、モミジ。聞き間違えならいいが…なんか窓が揺れてないか?」
「…だね。取り敢えず迎撃準備をしようか」
俺は今をどう切り抜けようか考えていると、不意に俺の部屋の窓が揺れているのに気が付き、モミジにそれを聞くとモミジもまたそれが車などの揺れではないのに気が付き、渋々だが抱きしめていた俺を離して指を噛んで出血させて魔武器の火縄銃を出して揺れる窓に向けて構えた…次の瞬間!
ズドーン!!!
「「!?」」
揺れていた窓が周りの壁ごと内側に膨れて破壊された。モミジは急いで発砲し、破壊した何かには当たるがそれは平然とそこにあり俺は俺で急いでベッドから飛び起きた。
「ど、どうした雄二!?」
「ゆうちゃん、無事!?」
「なんだ、何が起きた!?」
それと同時に部屋に入ってくる父さんと向日葵姉さんと雫姉さん。そんな混沌とした状況の中で部屋に突っ込んで来た物がようやくわかり始めた。
「「「「…桃?」」」」
桃だ、軽トラ並みにでかい桃が壁にめり込む様に部屋の壁に突っ込んで来た。流石に意味の分からない状況だが…
「桃から生まれたお姉ちゃん〜!♪」
「「「「は?」」」」
いきなりその桃から火縄銃の弾がめり込んだ板蒟蒻を片手にあり得ない人物が飛び出て来た。
「いや〜、久々に実家に来たら3階建になっていたから何処にご帰宅突撃かまそうか考えて感で選んだ部屋からまさか雄二の部屋だったとは!」
グズグズに溶け始める板蒟蒻を投げ捨てて、グズグズに溶ける巨大な桃をバックに笑顔で近づいてくる白のワンピースを着た人は現アメリカでも最強に近い生物。
アメリカの州軍の演習で抱き巻き卵一つとポップコーンだけで圧勝し、大根や麩菓子や大豆などで様々なモンスターを倒し、冷凍カジキマグロや納豆などで犯罪組織を壊滅させる地球の歴史に残る偉人にして狂人にして人類のバクそのもの。
「やあ、愛しの弟よ。翼お姉ちゃんのご帰宅だそ♡」
笹木 翼姉ちゃんがそこにいた。
ダンジョンと服と俺 @katuonotatakpe
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