第29話
〜〜 7月 11日 荒川区 喫茶『Re:ゲイン』 side 笹木 承太郎 〜〜
〈という事で、いよいよ明日は東京で行われるG20サミットの開催日!現在各国の首脳達が続々と東京に集まっており、現在も厳重な警戒体制を…〉
「はぁ…国のお偉いさん達が雁首揃えて皆で何を話すんだか?」
俺は笹木 承太郎。東京は荒川区にあるこじんまりとした喫茶店、喫茶『Re:ゲイン』のマスターをやっている。席はカウンター席が15席のみ、ただこじんまりと商売ができる仕様にしているほぼ趣味みたいな喫茶店だ。
一応、ダンジョンが真隣にあるおかげで繁盛はしているから問題はない。しかし現在時刻は14時、普段ならまだ店を開けている時間なのだが…俺は臨時休業の立て札を店の出入り口に立てた後にカウンター内でコーヒーを5つ入れつつ、店に設置しているテレビから流れていたニュースに反応していた。そして、コーヒーを淹れ終わると目の前に座っている5人に差し出す。
「おら、ブルーマウンテンのブラックだ。雄二も気に入っている豆だから美味いぞ
雫ちゃん、向日葵ちゃん、一護くん。後、おじさんらも久々に顔を見せてくれたんだ。遠慮なく飲んでくれ」
「ありがとう、承太郎くん。いただきます」
「…うむ、いい香りだ」
「「「…いただきます」」」
差し出したのは本来ならこの場にはいる筈のない5人、雄二の本当の兄弟である雫ちゃん、向日葵ちゃん、一護くん、そして真田の爺ちゃんである『真田 優人』と真田の弟『真田 正』。
「全く、突然来るんでビックリしましたよ。おかげで臨時休業の札を出して対応する事になりましたから今後は一本連絡を入れてから来てくださいね」
俺はそう言いつつコーヒーを淹れている間に雫ちゃんから渡された書類を手に取り、目を通す。
「…なるほど、よく調べてある。3人とも、いい探偵を雇ったんだね」
「…」
それは雄二に対する調査報告書だ、事細かく在籍している中学校から俺の養子になった経緯が事細かく調べてある。かなり優秀な探偵を雇ったのが分かる…が、この報告書だと昔にいた施設の時の写真しか無いから今の姿は知らないのだとも理解できた。
「いや、調査報告書を見せてもらった時は驚いた。まさか『幸村』の親友である君が雄二を引き取っていたとは…本当に見つけてくれてありがとう」
「俺達もあの事故から半年も意識不明の入院をしていたから雄二の事は何もできなかった…それに事務所だって会長と社長の不在でかなり経営が不安定になっていて、早く立て直して社員の生活を守らないとって叔父さんと一緒に躍起になって仕事をしていたから雄二の事を後回しにしていたからね…兄さんの大切な家族を見つけてくれてありがとう、承太郎さん」
「…2人とも、別にいいっすよ。俺も真田と美鶴と連絡が取れなくなった時点で探りをいれるべきだったんですから」
そして、優人さんと正は俺に幸村…まあ、真田の本名だが、それはいい。真田と美鶴との一件で2人とも連絡が取れなかったから俺は2人の会社経営を心配してあえて放置していたが、どうやらすぐにでも連絡は入れるべきだったようだ…まあ、2人とも事故のせいでスマホとかぶっ壊れて連絡先が文字通り木っ端微塵になったから更に連絡がつかなくなったたって原因もあるがな。
「私達も、まさか承太郎おじさんの所に雄二がいるとは予想外でした、でも同時に安心しました。承太郎おじさんは優しいのは知っていましたから雄二は絶対に健康に生きているって確信がもてました」
「お姉ちゃんに同意、流石に予想外だよ。おじさんの事は知っていたけれど完全に私達の予測外だったしね」
「…俺は悔しいっす。俺のチームの仲間達にはおじさんの店のハヤシライスの美味しさを布教してました。だから、もし一回でも一緒に仲間達とこの店にきていれば…もっと早く雄二に再会できていた筈なのに…!」
そしてその後に3人が次々と口を開く。この3人と雄二は子供の頃から翼と遊ぶ為に店に来てよく遊んでいた、だから3人は俺の事や店の事、この店自慢のハヤシライスの美味さや俺と真田と美鶴の仲の良さを知っている。だからこそ雄二も施設に迎えに行った際にすぐに俺だと気がついてとんとん拍子に養子になったんだ。
だからこそ、俺は今から彼らに聞かねばならない。分たれた兄弟だからこそ非常だと言われようが、それが息子を守る事に繋がるなら俺は絶対にやる。
「それで、言い方は悪いが今雫ちゃん達はここら辺一体…いや、荒川区全体で嫌われているあの男の家族になっている。だから、それを踏まえて聞くんだが…何をしに来た?まさか俺の息子に手を出す気か?そうなら…俺はお前さんらと戦わなきゃいけなくなるぞ?」
「「「…っ」」」
俺は昔にヤンチャしていた時の様な殺気と圧を出しながら5人にそう聞く。雫ちゃんら3人は優しい俺しか知らない、だからその圧で言葉が詰まって固まってしまうが、昔の俺を知っている2人は涼しい顔をしていた。
「いやはや、『荒川の防波堤』は今も現在だね。安心したよ」
「…やめて下さい、恥ずかしいっす」
俺は優人さんの言葉に若干照れる、だが雫ちゃん達は何の事だか分からない顔をしていた。そんな中、正が俺に向けてある書類を出す。
「実は、承太郎さんにはコレについて相談に来たんですよ。勿論本人達は全員が同意していますし、何なら私達が全力でサポートさせてもらいます」
「コイツは…」
正の言葉に、俺は書類を手に取って読み始める。そんな時に店に入ってくる人物がいた。
「どうも〜、遅れてしまいすみませんでござる」
その人物の名前は武蔵、俺が5人にコーヒーを振る舞う為に豆を選んでいる最中に連絡をとっていた俺の援軍だ。
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