黒歴史②

 約束した覚えないんだが?!

 学校を出る時は…いや、一旦とかなんとか言っていた気がするな。


 あれってそういう意味だったのか。陽キャたちと一緒に遊びに行っているものだと思っていたから最初のぞき穴から彼女の顔が見えたときはびっくりした。


「それで何の用なんだ?」


「そうですね。まずは久しぶりに華凛ちゃんに挨拶をしたいと思ってます。そのあとは琉都くんにお話がありますのでお部屋にお邪魔させていただきますね」


「あ、あぁ。わかったけど」


 今華凛は出かけてるけど、話す時間くらいはあるか。そういえば華凛とひめは仲が非常に良かった気がする。

 学校以外の時間、公園やら家やらで遊んでいたときは華凛がひめと遊びたい遊びたい、と騒いでいた気がする。


 再会したらどんな感じになるのだろうか。俺も感動したが、女の子同士ではまた違った感情を抱くのではと予想。


「華凛今買い物に行ってるし、先に俺の用事を済ませないか?」


「ん~、そうですね。いい考えですね。じゃあ先にお邪魔させていただきますね」


 あ、でもちょっと待てよ。まさかお客が来るとは知らず、まったく片づけをしていない。

 やっべ、別に彼女ではないとはいえ女子を招き入れるのであれば最低限きれいにしなければメンツが立たん。


 急いで自室に向かうとやはり俺の部屋は思ったよりも散らかっていた。ベッドの上には読みかけの漫画が置かれてあるし、机の上には開きっぱなしにノートと教科書が乱雑に置かれてある。


「俺ってこんなに適当や奴だったっけ?」


 自分が思ったよりもだらしなくてがっかりしている。これからはもっと注意しよう。部屋は綺麗にしておくことに悪いことはないしな。


 五分ほどかけて最低限片づけを行った俺はリビングで待っていてもらっているひめを呼びに向かった…のだが、


「何をしているんだ?」


 ひめは何かを読んでいるようだった。


「あ…琉都くん…てへっ」


「てへっ、じゃねえよ。何勝手に人の卒アル読んでるんだ!」


 ひめがリビングの端っこでニコニコ笑顔で読んでいたのは俺のアルバムだ。それも中学校の頃のアルバム。

 よりにもよって中学校の頃のアルバムだ。


「可愛いですね、中学校の頃の琉都くん。私も一緒にいたかったですっ」


「…今から一緒なんだから別にいいだろ」


「ふふっ、確かにそうですね。その通りです。私はずっと待っていたんですよ。この時を…」


「準備できたから行こうぜ。華凛が帰ってきたらまた降りてこよう」


「そうですね。琉都くんに見せたいものがあるんです」


「見せたいもの?」


「はいっ、これを見たら琉都くん、すっごく驚くと思いますよ」







「頑張って綺麗にしたんですね。少し散らかっていた痕跡があります」


「くっ…いいだろ別に。世の中の男ってだいたいこんなもんだよ」


「ふふ、そうですか。いいんですよ、私は琉都くんがどんなにだらしなくなっても受け入れますよ」


「冗談はよしてくれ。彼女でもあるまいし」


「…まだ、ですけどね…」


「ん?ごめん、小さくて聞き取れなかったんだけど」


「ううん、気にしないでください」


「そうか?わかった」


 それにしても華凛以外で初めて女子を入れたけど、なかなかドキドキするな。幼馴染でこれだけ緊張するんだから初めての彼女を連れてきたときは爆発するんじゃなかろうか。


 頭と胸が。


「じゃあ、早速ですがこれを琉都くんに見せたいと思っていたものがあります」


 ひめは肩掛けバッグの中から財布を取り出すと、中から薄っぺらい紙を取り出した。

 なにやら黒い文字で書かれているが…何が書かれてるんだ?


「ちなみにこれを見て琉都くんはなにか思い出しませんか?」


「ううん、そんな紙知らないけど…」


「そうですよね、だって幼稚園の頃にもらったものですし。何枚か小学校の頃にももらった記憶がありますが」


 彼女の言い方からしてその紙は俺がプレゼントしたものらしい。そんなもの渡した覚えはない…と思うんだけど…何か引っかかるような…。


「仕方ありませんね。ですが、私はこのような時のために残していたんです。遠慮なく使用させていただきますね」


「う、うん…なんなんだそれ?何か引っかかるんだけど思い出せなくて」


「これですよ」


 そういって彼女が俺に差し出した紙には『なんでも言うことを聞いてあげる券』と汚い文字で書かれていた。





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申し訳ありません。

前話との矛盾がありましたので修正いたしました。(一月十日、12時11分)

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