二十七 聖戦
「危ない
大和の危機をみて
「げっ……げふっ……がぁっ……あぐっ……!」
地面で何度かサッカーボール並みに跳ねたのち、ごろごろと転がって起き上がった。
「へっへっへっへっへっ……!」
坂倉が。
大和の両手を背中側に回して
「ミツ君……助け……て……!」
「大和ッ‼」
光秀が叫ぶ。
いつしか坂倉はメイドたちに囲まれていたが、大和が人質に取られたことでみんな手を出せないでいた。
「苦しそうだなあ大和……! どうだ? 苦しいだろう? 苦しいと言え‼」
鎖鎌が大和の首筋の
「く……苦しい……! 痛い……!」
「そうか! 苦しいか! 痛いか! 俺様がてめえに楽になれる魔法をかけてやろう……!」
——刹那。坂倉の手が
「⁉ ひっ‼ ひいいいいぃぃいいいいぃぃっ⁉」
大和は自分がされようとしている行為が何なのか信じられなかった。思考が真っ白になり、目に涙が
「や、大和から離れろおっ‼」
光秀が涙ながらに崩れ落ち、
「
レックスが
坂倉がピタと手を
「
信長は何も言葉を発することなく一歩、二歩と前に進み出た。
くくくっ……と
「てめえ何がおかしいっ‼ これは俺様たちの意思表示なんだ‼ 俺様は
坂倉は一旦息を継いだ。
「俺様は‼ てめえらを許さねえ‼
坂倉の目には涙が浮かんでいた。
「坂倉……」
大和が
「くくく……ははは……はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ……‼」
「だから何がおかしいってんだてめえはよおッ‼」
坂倉が一層激しく
「『聖戦』と言うたな」
「そうだ‼」
「——
「何だと……!」
信長は坂倉を
「貴様はただ
信長は
坂倉は、大和の首筋から、自分の腹へと鎖鎌の刃を移動させた。そして——
「…………っ!」
坂倉は腹を切れないまま、その場に鎖鎌をからりと取り落とした。
——しかし坂倉は大和の手首を拘束したまま再び風になり、取り囲むメイド一人の肩を蹴って高く跳躍。大和を担ぎながらくるりと宙返りをしてメイドの壁を飛び越えると、大和を連れて
「……
信長が厳しい表情で呟く。
猿玉はハッキングされたコンピューターを必死に制御しようとしていた。
そこへ坂倉が暴れる大和を抱きかかえて飛び込んできた。
「ちょっと! 放してよっ!」
大和が足をばたつかせる。それを見た猿玉は実にいやらしく頰を綻ばせた。
「きゃっきゃっきゃっきゃっ! こういうシチュエーションは好きだなあ……! おい女。
「そんなのお断りよっ!」
「おい! 時間がねえんだ! とっととミサイルを撃て! 俺様は
「ミサイルが撃てるんならとっくに撃っとるわい‼ しょうがない、儂自身の手で時間稼ぎをする! 儂は頭領だがな……。坂倉。お前のほうがコンピューターに明るいだろう! あとは頼んだ……!」
坂倉はもがく大和の両手を後ろ手にしたまま手錠をかけ、両足首を自身の赤いスカーフで固く縛り上げながら察したのだった。
「放せ‼ このっ‼」
「——! 分かった……! 何としてもこの国を俺様たちの手中にしてみせる‼」
「さらばだ。愛する友よ……!」
猿玉と坂倉は涙ながらに熱い
ともに
「…………な、何よ……あんたら……! 何してるのよ……! これじゃ……これじゃあたしたちのほうが……!」
両手足を縛られた大和が、信じられないものでも見たかのようにわなわなと
ミサイル制御室のドアが激しい破砕音とともに割れた。メイドたちが転がっていた鉄筋をみんなで持ち、城門を破る
そこへ猿玉が鉄の爪を片手に装備して飛び出した。坂倉が乗った9K720イスカンデル-M戦域弾道ミサイルの車両の前に立ちはだかる。
「
「また古臭いな……。断る。貴様と一騎打ちをして余に何の得があるのだ」
信長が面倒臭そうに吐き捨てた。この男は自分にメリットがないととことん動かない。動こうとしない。
「一騎打ちを受けてくれるならば……ミサイルの自爆コードを教えてやろう……!」
猿玉はメイドたちに包囲されながら不快な高音で気丈に大気を震わせた。
「……自爆コードとは?」
言って信長が
猿玉の構えからは寸分の隙も
「自爆コードがあるとな。もしミサイルが発射されても、遠隔操作で自爆コードを入力することによってミサイルを自爆させることができるのだ。まあ保険だな……」
「信長さん。こんな奴の言うことなんか聞くことないよ」
近くの奏多が信長に忠告した。
「そうだ! 早く
「大和……!」
レックスが奏多に賛同し、光秀は大和の心配しかしていないようだった。
「……面白い」
「信長⁉」
レックスが思わず信長に振り返る。
「おい。道を
信長が開いたメイドの群れの合間を
「貴様たち。手を出すなよ……? これは余と猿玉の戦いである」
猿玉がニヤリとほくそ笑んだ。
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