第8話 出た?
翌日。
天真が洗濯場に向かうと、少し慌てた様子で铃が駆け寄ってきた。
「天真! 出た! 出た!」
「出たって……もしかしてオバケが?」
「そう! 昨日の夜、
「襲いかかってって……大丈夫なの? どこかケガでも?」
「いやケガはないわ。ちょっと尻餅付いたくらいで」
「それならいいけど……」
その時のことを思い出したのか、少し笑顔が引きつっている铃だった。
「…………」
「铃。そのオバケについて詳しく教えてくれないかな?」
◇
铃の説明はやはり「ピカーッ!」やら「ざざざっ!」ばかりなので正直よく分からなかった。
自分の説明が伝わっていないことを察したのか、「じゃあ、実際に見てもらいましょう!」と铃は提案してきた。
「え? 大丈夫なの?」
後宮とは皇帝からの寵愛を競い合う場であり、妃と妃たちは相争い、時には殺人事件にまで発展するという。
当然ながら異なる宮の侍女と侍女も競い合っているものであり――と、そこまで考えた天真は気がついた。自分と铃は普通に友人関係を築いているじゃないかと。
(あ、なるほど)
そもそも仙人である沙羅は超越者であり、皇帝からの寵愛競争の外にある存在だ。妃としても競い合う必要はないし、むしろ敵意を剥き出しにしては不思議な『術』による恩恵を受けられなくなる。沙羅の侍女と仲良くするのはむしろ歓迎されるのだろう。
しかし別の妃の宮を訪れるとなると話は別だ。
「え~っと、私が宮に行っても大丈夫なの?」
「大丈夫だと思うよ? むしろ蘭様も歓迎してくれると思う。沙羅様のお話が聞けるだろうし」
「……う~ん」
铃のお仕えする『蘭様』は沙羅を尊敬というか崇拝しているらしいが……実物の残念さを知っている天真からすれば「お話をして大丈夫かな?」と思ってしまうのだった。
しかしここまで話が進んで「やっぱりダメ」とは言いにくいので、結局は宮に向かうことにした天真だった。
次の更新予定
毎日 07:03 予定は変更される可能性があります
後宮のエルフさん ~残念美人と女装侍女の事件簿~ 九條葉月@書籍発売中! @kujouhaduki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。後宮のエルフさん ~残念美人と女装侍女の事件簿~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます