エクストラ 美玖の追憶(12)<本編第7幕>

『美玖、お疲れさん』


 待たせて、ごめんなさい――物理学実験室を出ると、ヨシ君がそこにいた。教室には一人で戻れるからと、伝えてはいたのだけど。


 明けて月曜日は緊急全校集会の後、全学年で自習となったね。部活も休みで、とある関係者以外は午前だけで帰されたんだ。理由は……雪緒先輩と百々田さんが佐倉坂先輩に襲撃されたことにあって。学校側が関連する生徒たちを、事情聴取しようとした結果で。


 雪緒先輩や佐倉坂先輩と同じ教室の生徒たち、それから同じ三年生の友人たち、そして文芸部の――元も含めた部員たちと、大勢から話を聞くことになった。必然、係になった先生たちも多くて。むしろ面談に使える教室がゼンゼン足りなくて。一つの教室内をパーティションでし切って、複数同時に行われたよね。


 ヨシ君は文芸部男子枠での面談で、場所は書道室だったはずで。別棟の校舎にあったから、お迎えには遠いのでと断っていたのに。


『トップバッターだったんだ。実質、最後まで部活参加してた僕の話が長くなるって思ってたからなんだと。疲れる前に終わらせたかったと言われたよ』


 ここにいる不思議さが顔に出ていたためか、自発的に説明されてしまった。出来れば考えをまとめる時間だけでも、欲しいと思っていただけなのだけど。


『副部長が犯人で、部長がああなったワケだけどさ。その心当たり――美玖には、ないんだよな?』


 ……ないよ――あるのは推測だけだった。あの羽田野の言葉を始まりにして、状況を鑑みたときの妄想があっただけで。ただ確実に死をいざなう毒だったから、しかも濃度を増していたから……たぶん曇った笑顔になっていたんだと……


『美玖が心配なんだ』


 大丈夫だから。美玖には影響ないから――出来るだけにこやかに心がけて、ヨシ君へ向ける顔を作った。


『本当にか?』


 ホントウだよ――けれど、思うように表情を作れたか、疑わしかった。心配気に見つめるヨシ君の顔を――目を見返せなかったくらいに。もっと気にかけてしまうと解かっていても、校舎の外へと視線を外してしまったよ。


 それでも美玖が案じていたのはヨシ君の安全だけで。二人で逃げても、ヨシ君を遠ざけても、正解ではなかったから。あの羽田野の言葉は、らせんの渦のようにワナを張っている、そんな宣言だったから。張りめぐらされたカラクリは今、着実に中心の美玖へと近づいていた。その中心にはもちろん寄りそう……


 だから、第三の手段を見つけ出さないといけない――そう思い込んでしまったの。


   ◇◆◇


『やれやれ。キミから久しぶりの通話と喜べば、最初からそんな話か』


 ご冗談を? それにあなた羽田野さんには、そんなでしかないのですか!――端的に解決しようと、羽田野と連絡をとったけれど……


『そう詰められてもね。ボクはせいぜい、背中を押してあげただけでね』


 ズルい方法で、でしょう!――非を認めない彼に、気持ちが高ぶった。雪緒先輩たちをあんな目に引きこんだことが許せなかった。


『確かに平凡じゃないね。だからと言って、非情なわけでもない。あくまで人の情動に少し訴えるだけ。温情だと思って欲しいよ』


 凶行に手を染めさせてもですか?――非は雪緒先輩たちにあると暗に言った羽田野にイライラが募ったよ。だけど――


『偶々決断に至った、切っ掛けに過ぎないさ。5W1H、どれも使ってないよ? だが心のままに行動するか抑えるか、あるいは反撃するか。それは術を掛けられた背中を押された者の願望次第さ』


 どこまでも突き放す言葉が受け入れられなくて。謝罪とか自省とか、負い目を感じさせそうな言葉を探して迷ってしまったんだ。そんな言葉の途切れたスキマにヘビが入りこんで来たの。


『キミこそ、どう何だい?』


 えっ?――言外の意味を察せられなかった。うんん、察したくなかった。それで無意識にとぼけたんだ。


『キミにこそ、多くの切っ掛けを与えていたんだがね。中々に思うように反応してくれなかったよ。いやはや、その秘訣を是非ともご教示願いたいね?』


 …………そんなもの、在りはしないわ――ヨシ君だけのためのお口が脳の中を通りすぎた。羽田野には隠し通さなければいけなかったこと。だから否定の言葉がこぼれ出たんだ。でも彼は察しが良すぎたのね。


『そうかな? 彼氏は違うのかい?』


 ……ヨシ君に手を出そうというの?――存在を出されては、とぼけてなんていられなかった。小さい犬が大きな生き物を警戒してうなるように、低い声で相手を威嚇したけれど――


『いやはや、怖い声がしたよ。背筋がゾクッとして嬉しいよ』


 おふざけはやめて!――羽田野には通用していなかった。それどころか、おちゃらけた声ですっと美玖をからかってきた。


『お巫山戯でもないんだけどね。じゃあ本題と行こう』


 ゴクリ――自然と美玖ののどがなったの。知らず知らず緊張がピークに達しようとしていたから。


『賭けという、ゲームをしようじゃないか』


 ……そんなものに乗るとでも思うの?――ヨシ君の笑顔が脳内をかすめた。イヤな予想を振り払いたくて、首を勢いよく振って。それでやっと、期待通りになんて行かせないと答えられた。


『乗るさ。乗らざるを得ないんじゃないかな』


 ……どうして、言えるの?――血の池と横たわるヨシ君を、羽田野の言葉がダブらせた。ますます見たくない想像が膨れ上がった。


『聞いたからさ。キミの秘することをね』


 ギリっ――思わず歯ぎしりの音を立ててしまった。それほどに激しい怒りが燃え上がって。けれど携帯の向こうからした音声は反比例するように軽かった。


『ふふふ、ボクの口が軽くならなければいいよね?』


 …………何をすればいいの?――最低の脅しだったのに。それに屈してしまった美玖も最低だと感じた。でも……


『ほらほら、乗ってき――』


 ふざけが過ぎるなら下りるわよ――最低同士なら、せめて主導権くらいは取らないとと思ったから。ただ冷たい美玖の声がもっとずっと彼を喜ばせてしまって。


『あははははは、それは勿体ない。降参しよう』


 なら、さっさと――もっとずっと嫌味を続けようとしたんだ。でも羽田野の声が立ちきって、美玖の脳内を揺り動かした。


『ヒントは彼氏じゃないキミの男だ。それを止める。これがミッションだ』


 ヒッ――雪緒先輩の事件ですり込まれたイメージが、一瞬で美玖とヨシ君と――それからハル君でとって代わった。大ショックだと表明するように、小さな悲鳴が出たの。


『賢いキミでは簡単過ぎて詰まらないか。そうだ、彼には隠れてもらおう』


 ダメ!――雪緒先輩の事件同様に心を封じられ入れ替えられたが、愛しの男の子を襲う光景に目がチカチカした。凶行か美玖の視界か、どちらを止めたかったは分からなかったけれど、羽田野だけは止めようとしたんだ。


『おっと、聞けない相談だな。それでは開始の合図をしよう。よーい、ドン!』


 意地の悪い言葉と号砲を残して、プチっと通話が切れた。電話を掛けなおしてみても羽田野が出ることはなく、やがて電話会社の機械音だけが応えてくれるようになった。そして美玖の心は、寄りそってくれる愛しの男の子ではなく――


 …………ハル君…………


   ◇◆◇


 ヨシ君に明かせないことが、また増えてしまった。そして守るものが多いほうに勝ちはないと、思い知らされたんだ。もしも引き分けまで持ちこめたなら、最良の結末かもと思ってしまった。


 ともかく始まったゲームから、一人で下りることはできない――したくなかった。仮にヨシ君が無事であっても、ハル君に一大事が起きてしまっては……美玖を保てる気がしなかった。だからゲームに集中することにしたの。


――ヨシ君に美玖を疑わせてはいけない――


――ヨシ君にゲームを知られてはいけない――


――ヨシ君にハル君を意識させてはいけない――


 たくさんのゲームルールを考えて選んだ筋道は、文芸活動を続けることだった。文芸部はなくなってしまったけれど、ゲームプレイ時間を作るためにも人と会う理由を作るためにも、ヨシ君へのブラインドと最適だったから。


 でも美玖一人の文芸活動はハッキリといって不自然だった。それで初めは事態を憂いる人で補おうとしたのだけど――


 小草城先輩は心を病んで休学していた。雪緒先輩の変化に最も賛同したほどに、シンクロしていたのだと理解させられた。


 加羅達先輩は乗ってこなかった。結果的に雪緒先輩の友人ではないと悟った。


 実弥間先輩は……転校がもう決まっていた。申しわけないと、私立校との伝手を置いて公立校を去っていった。ご実家が状況を許さなかったのだと思った。


 結局は元文芸部の一年生たちの集まりから始めることにした。いずれは彼女たちに内緒で、ホンボシに立ち向かわねばならないと心に誓って。


 一方で実弥間先輩の伝手を頼って、私立校の情報収集に勤しんだ。私立校との公的な交流は、学校から禁じられてしまったから。当事者が文芸部員だから、決定した先生たちに抗議もできなくて。


 ただ伝手という彼女は文芸部員ではなかった。もちろん羽田野率いた生徒会のメンバーでもなくて。もっと言えば、羽田野の被害者でもなかった。だから私立校の暗部には疎かった。


 判明したことといえば、羽田野はとうに不在にしていたこと。二学期の初日に、正確にはその始業式で会長職を代理に譲り、実家へ戻ると語ってそのまま休学していった。会長職は再来月の会長選挙まで、空白となったそうで。


 雲隠れした羽田野に何度通話を試みても、電話会社の機械音声が応えるだけで変わりばえはなかった。もちろんハル君に掛けても同じ状況で。時間だけが過ぎる日々に内面は焦っていたんだ。そんな時――


『なあ、美玖。今度のエッセイは面白かったよ』


 そうぉ?――事件前の通り、ヨシ君には活動成果を見せていた。ただ作品を見せたときの、ヨシ君のフインキはどことなく以前と違った気がして。


『緊張感? 登場人物の焦燥感? 物語性がすごかったからさ』


 美玖のこと、美玖の周りで起きた最近のできごとを書いただけで。なので、言われた通りだと嘆息したのだけど――


『……けどよ? 部活はなくなったよな? 何で、まだ、書いてんだ?』


 ……それは……


『それは?』


 ヨシ君には係わりないから――ヨシ君をゲームから遠ざけることばかりに気が行ってしまった。だから後でこの日の美玖を残念がることになってしまった。どうしてヨシ君を正面から見なかったのかと――原因を求めては、美玖のせいだと自己嫌悪してしまった――


   ◇◆◇


 ハル君の行方を求める方策に行き詰ったころ、ある人からの着信音が夕暮れに響いたんだ。


 雪緒先輩、お身体は大丈夫なんですか?――予想になかったから、緊張して声が上ずって。無難な話題を選びすぎて、雪緒先輩に気を使わせてしまった。


『ありがとう、美玖ちゃん。ちょっとあるけど……うちはね、何とか大丈夫。それより……とっても、ごめん』


 そんなこと――受話器の向こうから頭を下げた気配がした。頭を下げられる謂われなんて……美玖のほうにこそ、あるのに……


『――美玖ちゃんなら、察したよね? うちからの呼び出しも、うちらが襲われた流れも』


 ごめんなさい、悪い予感がして――見捨ててしまった罪悪感が、素知らぬふりした負い目が、美玖を責めたてて。二度三度もっともっと頭を下げながら、悲鳴のように弁明してしまった。それなのに――


『謝らなくていいんだ。あの羽田野から、美玖ちゃんたちが逃れられたんだから』


 先輩?……もしかして、解けて?――知りあったころの優しい声が耳を打った。本心から案じてくれた声が、あこがれた雪緒先輩の時のままで。それでも――


『だとイイんだけど……どこからどこまで、うちがうちなのか、もう分かんないや』


 そんな――雪緒先輩の嘆きは自虐に転じてしまった。そこで慰めようにも言葉が見つからなくて。先輩もスイッチが入ってしまったのか、止まらなかった。


『こうして通話してるのも、うちの判断なのかどうか。結局……あははは――』


 ……なら、この通話は美玖の欲望――美玖が必要だったからだって、思ってください――終いには鼻をすする音だけが聞こえた。先輩が未だ立ち直っていないと、悟るには十分だった。だから――今だけではなく出会ってからの恩も積みあげて、美玖から提案したんだ。


『気ぃ使わせて、ごめん』


 だから教えてください、先輩。私立校のを――もちろん美玖の利益も忘れたりしなかった。なぜなら、今のうちにしか聞ける相手ではなかったから。


 数日前、昇降口の美玖の下駄箱に投げいれられていた切れ端。書かれていたのは、羽田野へ続く道ヒント。知りたければ調べろという内容だった。そのキーワードが私立校のだったんだ。


『それ、どこから……うんん、今更だね…… カラ…チかな?……』


 お終いは小声過ぎて聴きとれなかった。人の名前をつぶやいたことだけは理解できたけれど。


『……覚悟は出来てるんだね?』


 はい――決着をつける覚悟は、ここしばらくの活動で確実に形を取りだしていた。なので、うなずき返したのだけど――


 『通りゃんせ』というわらべ歌。本当に問われた覚悟とは、その歌詞が示す道を歩く覚悟だった。そのことを理解できていればと、後に悔やむことになった。


   ◇◆◇


 それからは私立校のを探る日々になった。実弥間先輩の伝手の彼女によれば、日当たりもほどほどでもの静かな場所だったらしい。訪れてみても、いかがわしいフインキは少しも感じないという話だった。


 雲隠れした羽田野に迫るには直接当たるしかなかった。実弥間先輩のように世間では上流と語られる家系という話だったから、里帰り先への突撃は選ばなかった。どちらかと言えば、小娘一人をかどわかすなんて簡単に思えたから。


 それと伝手の彼女にはこれ以上の深入りは不要と伝えた。被害がおよんでは……保てそうになかったから。なので、学校から言い渡された禁を破って、どきどき美玖が様子を見に行った。


 あくまで道路から見るにとどめて、中へは入らなかった。ただ聞いていたとおり、あやしいニオイはしなかった。おかげで不安をかき立てられたんだ。もうハル君の身代わりにさえ、成れないのかと。


 こんなふうに時計の針が何周もしたころ、思いかけない人から連絡があったんだ。


   ◇◆◇


『須賀谷ちゃん、いらっしゃい』


 シックな内装の喫茶店、そのカウンター席に小草城先輩が座っていた。ドアを開けたまま、視線を左右に流して他のお客を確認したのだけど――


『警戒しなくてイイよ。だから』


 他のお客は女の子ばかりで、みんな席を離して座っていた。ただ緊張の抜けた人がいなくて、異様に感じられたんだ。それで入口を通りぬけたところで足が止まってしまって。美玖の様子に小草城先輩はため息をついて、言葉を続けた。


『あの生徒会長かその取り巻きに一言いいたい、そういう集まりなのよ』


 先輩はお体大丈夫なんですか? 入院したと聞いていたんですが――聞きたかった説明ではなかった。ここに美玖を呼びだした言葉は、『生徒会長あいつの復学日を知っている』だったのだから。


『出来るだけ背負わせたくなかったんだけど……敵意は取り払わないとね。ここにいるたち――あたしもね――同じ病院で出会ったんだ』


 まさか――背筋に冷たい流れが瞬間つたった。想像の通りなら、いくつの悲劇を生んだのかと、あの男に反省を投げつけたかった。


『察してくれて感謝するわね。公立校うちだけじゃなく、私立校根城はもちろん、近隣の高校学校にもちょっかい掛けまくってたみたいよ』


 そうですか――ようやく納得はできた。それでも入口に近いカウンター席を選んで腰を落ちつけた。


 それで、あの男はいつ?――警戒レベルは下げたとはいえ、手短に済ませたいから先を促したのだけれど――


『ほらほら、一人でしようとしてるでしょう?』


 鋭い指摘に口を閉じるしかなかった。うんん、予想しやすかったのだと、後からハンセイしたんだ。


『あたしだって、仇は取りたいの。友人のことも、自分自身も、ね』


 美玖はやっぱり、美玖のことしか見えていなかった。あの男が買っていた恨みの大きさに気づかされたんだ。だから反対の言葉も出てこなかったの。


『とりあえず、今晩は時間あるかな?』


 夕飯は食べてかえ――それって!――お母さんには夕食は要らないと、伝えてはいた。けれど、展開の速さに驚いてしまって。ただヨシ君には、ここまでの文芸活動と変わりない帰宅だとも話していた。だから少し……うんん、だいぶ悩んで考えだした答えは――


『みんな! 新入りに拍手を』


   ◇◆◇


 太陽がまだ十分に高い位置にある時間だったけれど、一団は喫茶店を後にした。ただし固まらないで、二人一組でそこそこに距離を開けて歩いた。何かありますと、道行く人たちに覚えが残らないように。


『……あそこに男の子、見なかった?』

『ごめん、そっちの方は見てなかった』


 そんな時に先頭を歩く二人の女子たちが一方を見て、こそこそ話をしている様子が見えた。一人が指さす方をたどって見ても、気になるものは見当たらなくて。


『たぶん高校生かな。一年生くらいの男子?』

『もしかして、私立校の?』

『うんん、全然知らない顔……だと思う。あいつらのせいで記憶に自信ないけど。あははは』

『そっか』


 微かに聞こえた会話に緊張感があったように思えた。ただお終いには緊張を解そうと、無理して笑っているように感じて。


……気…………い……て…………


 そうだと思った瞬間に耳鳴りが美玖を襲った。思わず立ちどまってしまった。けれど――


『美玖ちゃん、どうかした?』


 大丈夫です――最後尾の小草城先輩に追いつかれて、話しかけられた。今になって心配はかけられないと、強がってしまった。


 おかげで――全てが裏返る予兆から、目を離してしまったんだ。


   ◇◆◇


 私立校のには、下品な表情の男子たちが立っていた。その中心にいたのは、たしか副生徒会長とふんぞり返った男の子いう印象だった。他にも大勢の男子がいたけれど、どれも同じ顔つきで美玖たちを待ち構えていたんだ。


『お待ちしてましたよ』


 そう言って右腕を美玖に差しだしてきた。エスコートを理由にちょっかいをかけようという魂胆が見え見えで。その手もニヤつく顔も打ちはらいたかった。でも羽田野の不興を買ってはいけないと自重したんだ。イヤイヤながらに手を差しだしたよ。


『では、みなさん、こちらへどうぞ』


 他にいた女子たちにもエスコートが付き、余った男子たちを最後尾に、一団が移動を開始した。その時――


『ぐはっ!』


 ――裏門で悲鳴が上がったんだ。驚いて振り向いたの。そこには何故かヨシ君がいて――ハル君にお顔を踏みつけられて。状況認識を詳細に始めた脳が負荷に耐えかねて、叫びを上げようとしたんだ。けれど強引に腕を引かれて、口元を押さえられて。


『会長から聞いてますよ。この状況、お判りですよね? 須賀谷さんあなたの負けですね』


 ハル君の責め苦にヨシ君から音もなくなって、美玖は絶望に染まったんだ…………

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