第3幕 二不等辺三角の終演

 美玖一人で学校から帰ることが増えたよな。女友達とおしゃべりして帰るなんて理由も初めはつけてた。すぐそそくさと帰るようになってさ。


 でもそんな日は、決まって夕食後に僕の家に来て、一緒に寝泊りしたよね。ベッドの中で何度もキスさせてくれたから寂しさが紛れたよ。


 ただそれは、僕がとある画像を男友達から見せられるまでだった。バーガーショップで談笑するハルが美玖と写ってたね。学校でおしどり夫婦と揶揄われる僕らだったから、彼も驚いて思わず撮ったらしいんだ。


 僕は真実を確かめるしかないと行動に出たよ……


 ハルと落ち合って、佐賀美の家まで手を繋いで歩く美玖を見てさ。裏切られたとも訳があるんだとも……頭の中がグチャグチャになったさ。ただ納得だけ出来なかった――内緒にされたからな。


 だからその晩に問詰めたんだ。最初、はぐらかそうとしたね。でも観念して事情理由を聞かせてくれた。親父さんの死でお金に困ったことは分かるよ。けどハルの提案を受けるなんてさ。変だと思ったよ――泊まりに来る度、シャンプーの匂いをさせてたから。


『初めてだから、確かめて!』


 感情が爆発して言い合いになって、美玖もキレたんだよな。勢いも手伝って昔のように美玖の隅々を見た。視線の届かないところは僕の起立で確かめた。美玖の言う通りだったね。二人して嬉し涙だったよな。


 ハルのアルバイトは断わろう――朝目覚めてから二人で決めて、ハルを呼び出したよな。さすがにハルはショックを受けてた――僕らが絆を深めた事にも。その後の憎しみようは覚えてるよ。あらん限りの罵詈雑言だったな。


 けど僕の恋人ものだとキッパリ宣言したら、負け惜しみを残してハルは逃げ去ったね。僕はホッとしたけど、美玖は泣きそうな表情で――ハルの罵りに胸が痛んだのかな?


 ハルと不仲になった陰で、状況はより深刻化してたよな。僕の家も美玖のところも学費に困って、公立中学へ転校した。時期外れだし美玖と別教室だしで不安だらけでさ。美玖は簡単に友達を作って羨ましかったね。


 同じ頃、佐賀美が乗っ取った町工場こうばが整理されてた。権利何かの無形資産を大手企業に売って、借金以上のお金を作り出しやがってさ。それを手柄に銀行へ戻る佐賀美が恨めしかったよ。


 美玖もお袋さんも住処を追われて、僕の家に間借りしたね。父さんが再就職したばかりで恐縮してたよな。前より慎ましくなったけど、僕はうきうきしたさ。苦しくとも楽しい日が続くと思って……

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