3
次の日(二日目)。
「想太くん、ちょっと」
自分の部屋で漫画を読んでいたら、さんたがその漫画を奪ってきた。
「おい! なにすんだよ」
「ごめん」
「サンタさんが物奪うんじゃねぇよ」
「ごめん……今から遊びにいかない?」
僕は感動していた。子供に夢を与えるサンタクロースという存在はこんなに自己中だなんて。
「ゲームセンターに行きたいなーって」
最寄りのゲーセンは
「一人で行ってこい。今から場所教えるから」
学校が終わってゆっくりしようとしている時に、わざわざ私服に着替えて外に出るのは面倒だ。
「一緒にきてよ」
さんたはむっとして、僕の頭をぽこぽこ叩いていた。
「いやだよ」
「モテないよ」
「ほっとけ」
「……あなたは暴力魔でしかないの? 本当にそんな存在でしかないの?」
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭にハテナマークが次々と生まれた。
「どういう意味? っていうか、僕、最近は暴力我慢しているんですけど」
「まだ一日しか経っていないしー。それに、私が言いたいのは、あなたはそんなに悪い奴なのっていう……」
ハテナマークはさらに増殖した。
「どういうこと?」
「あなたは、無差別に人を殴るだけの、クズ野郎なのかって言っているの。女の子のお付き合いぐらい我慢できるでしょ、あなたなら」
僕はすでに暴力を我慢しているんだよ。
さんたは似合わない真剣な顔で一直線に見つめてきた。
僕は、さんたの言わんとしている事に気づいたが、なぜ彼女がそんな事を言ったのかはまじで分からなかった。
「そうだよ、無差別だよ、クズ野郎だよ。イラつく奴みてたら殴りたくて仕方ないんだよ」
さんたは、僕の暴力に訳があると考えていたのかも知れないが、そんな物なんてない。
ただ身体の中に燻っている黒いなにかを吐き出すための手段にすぎない、暴力は。
「そっか」
さんたは小さくそうつぶやいた。と同時に、にやっと笑った。
「え、なんだよ」
「要するに、想太くんはストレス発散のために人を殴っているんだよねー。だったら、ゲームセンターでパンチングマシーンやろうよ!」
やられた。
「でも、パンチングマシーンも暴力にならないの?」
さんたはぶふっと笑った。
「あんたバカでしょ」
「な!」
「暴力っていうのは、人を無駄に傷つけることだよ」
さんたはまたぶふっと笑った。
「僕はぜっーたいに行かない!」
「今の内にストレス発散しておいた方がいいよ。願いを叶えるために」
確かに身体の中の黒いなにかは結構溜まっていた。それがいつ爆発してもおかしくないぐらいには溜まっていた。
早江は絶対助けたい。
私服に着替え、寒くないように着込んで、ぱっぱとゲーセンへ向かった。ゲーセンへ着き、マシーンで久しぶりに殴った拳の衝撃はいつも感じているものより気持ち良いものだった。
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