僕は後悔しているのだろうか　ーカクコン１０　短編お題『雪』ー

久しぶりにあの場所に行く。

今日なら、君に逢えるかもしれない。

人っ子一人居ない早朝の公園。

今年初めての雪が降り積もり、全てが浄化された真っ白な無音の世界。

あの日、君の血に染まっていたベンチも、雪で覆われ、白一色。

ごめんね、怖い思いをさせて。

ごめんね、痛い思いをさせて。

ちゃんと償うつもりだったんだよ。

逃げたわけじゃないんだよ。

でも、誰も僕を疑わなかったから、捕まらなかっただけなんだ。

僕の心に、白々しい言い訳ばかりが降り積もる。

あの日から、ずっと、僕の心に降り積もる雪。

罪を覆い隠し、無かったことになるように。

歪（いびつ）で邪（よこしま）な愛を浄化するように。

しんしんと降り続く雪。

でも、その真っ白な世界に君は居ない。

時折、ふっと、何かのはずみで心が温かくなった時、溶けた雪の下からひょっこり顔を出す記憶が辛いんだ。

僕だけの君にしてしまえば、幸せになれると思っていたのに、心は凍えたままなんだ。

僕だけの君になったのに、ずっと、孤独なままなんだ。

今、とても、君に会いたい。

しんしんと雪が降り積もる真っ白な世界。

君の居ない世界は、とても寒い。

ー完ー