第1話
私の家は代々呉服屋を営んでいた。
だが時代は着物から洋服へと移り変わり、繁忙期といえば成人式のある一月や卒業式が執り行われる三月の前辺り。
周りの切磋琢磨していた呉服屋は次々に店を畳み、残っているのは私の父が店主を務めるお店だけとなった。
商売が繁盛していたお爺様の時代から常連のお客様や時々大量に注文を入れてくれる太客のお客様のお陰でお店は細々と続いていたが、業績は右肩下がり。
父はお店を閉めることも考えているようだった。
そんな中、飛び込んできたお見合いの話。
相手は私達のお家の何倍も高貴なお方で、私に声が掛かったことにみんなが驚いていた。父も母も私が好いた相手と結ばれれば良いと寛大に私のことを見守ってくれていたが、もしこのお見合いが上手く進めばお店を畳まずに済むかもしれないと頭を下げてお願いされた。
私もこのお店が大好きだった。
幼い頃から時間が許す限りお店に並ぶ反物や仕立て上がった着物を隅々まで眺めていた。一つ一つ丁寧に描かれた柄、触れるとそれぞれ違う良さを持つ生地。着物を身につけた時のお客様の歓喜の笑み。
キラキラしたその世界は、私をいつも笑顔にさせてくれた。
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