第24話 新しい友達

 体育祭が無事に終わったあと、とある日の昼休み。


「天方君、ちょっといいかな?」


「おお、香和君か。どうかしたか?」


 今までほとんど話したことがなかったため少し驚いてしまったが、体育祭を機に友達になったので話しかけられるのも当然だな。


「もし良かったら、お昼休みに一緒にご飯を食べたいなって思って。いいかな?」


「もちろんいいけど、龍心も一緒でいいか? おれはいつもあいつと食べてるから」


「龍心……?」


「ああ、悪い、下の名前じゃわかりづらいか。迅列のことだ、わかるか?」


「あ、迅列君のことか。うん、分かるよ。迅列君さえよければ、ぼくは全然いいよ」


「まあ、あいつなら大丈夫だろ」


 そんな話をしていたらちょうど龍心がやってきた。


「お、来たか龍心。香和君が一緒にお昼を食べたいって言ってるんだがいいか?」


「ん? ああ、もちろん構わんぞ」


「だそうだ。よかったな香和君」


「うん、二人ともありがとう!」


 そう言って、香和君は微笑んだ。ふむ、元々可愛い顔をしているが、こうやって笑顔になるとより美少女度合いが増すな。


 そういえば、おれは大丈夫だが龍心は大丈夫なのか? 失恋のしすぎで、可愛ければ男でもいいかなとか言い出したりしないよな? ちらと龍心の様子をうかがうが今のところは大丈夫そうだな。


「そういえば、迅列君ってさ」


「オレのことは龍心でいいぞ」


「えっ、いいの?」


「当然だ。オレ達はもう友達だろ」


 はえーよ龍心。友達認定もそうだが、すぐに名前呼びなのかよ。でもまあ、そういえばおれのときも確かそうだったな。


「友達……」


「なんだ、嫌なのか?」


「ううん、全然。ありがとう、……た、た、龍心君。……なんか相手を名前で呼ぶのに慣れてないから、やっぱり苗字呼びでもいいかな? あっ、でもぼくのことは由でいいからね」


「まあ、そういうことなら構わんぞ。よろしくな、由」


「うん! よろしくね、迅列君!」


 香和君はとても嬉しそうに笑った。そういえば、男子から避けられていることを気にしていたからな。こんなにあっさり友達になってくれたうえに、親しげに名前で呼んでもらえればそれは嬉しいだろうな。となると、ここはおれものっかっておくか。


「なら、おれも由って呼んでいいか?」


「うん! もちろんいいよ、天方君!」


 こうして、おれ達三人は男同士の友情を育みながら昼食をとる。それから少し経つと、由が口を開いた。


「そうだ、さっき訊こうとしたことなんだけど、迅列君ってすっごくモテて恋愛マスターって呼ばれてるんだよね?」


「ああ、そのとおりだ。オレもかなり有名になったもんだな」


 えっ、誰それ? おれその有名な迅列君知らないよ。すっごく振られてる失恋マスターの迅列君なら知ってるけど。


「やっぱりそうなんだ。すごいなあ」


「フッ、まあな。もし、恋の悩みがあるならオレに相談するといい」


 目を輝かせる由と、どや顔を決める龍心を前にしておれはどうすればいいんだろう。普段なら龍心にツッコミを入れるところだが、由が素直に感心しているのを見ると水を差すのも悪く思えてくる。


「恋の悩みかあ……。ぼくは恋とかまだよく分からないから、それが悩みと言えば悩みかなあ」


「そうか。なあに、焦ることはない。いずれお前にも分かるときがくるさ」


「うん、じゃあそのときがきたらよろしくね」


「ああ、任せておけ!」


 龍心は相変わらず謎の自信にあふれ、サムズアップを決めていた。まあ、二人とも楽しそうだし、とりあえずツッコミはやめておこう。


「それで、話は変わるんだけど二人は今日の放課後とか空いてる?」


「今日か……。すまんが、オレは大切な人(家族)と用があってな」


「大切な人(恋人)と……。やっぱり迅列君はすごいなあ。じゃあ、天方君は?」


「おれは空いてるけど。なにかあるのか?」


「……実はぼく、友達と放課後に買い食いとかしてみたくて。迷惑じゃなければいいかな?」


「まあ、別にいいぞ」


「ほんとに? ありがとう、天方君」


 そういうわけで、放課後に由と出かけることになった。

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