第2話 ナイフ使いの殺人鬼 榊
「これより、殺し合いを始ます。武器は壁に掛かっている物を使用して戦って下さい。尚、2人とも戦わない状態を続けた場合、部屋に毒ガスが充満しますのでご注意下さい……。勝負は、どちらかの死をもって決着します。ご両者とも、視聴者の高評価を得られるよう頑張ってください。では、健闘を祈ります……」
アナウンスが終わると、2人を隔たっていた柵が天井に向けて上がり始めていたのであった。
「無抵抗の女を殺るのは気が引けるが……しかたねぇ、俺も命が大事だ……」
榊がそう言って、武器が立て掛けてある壁の方に行ったのだ。そして、美怜は周りを見渡すと無数の武器が存在していたのだ。
刀・ナイフ・斧等の武器が飾られていたのである。彼女はその数の多さに圧倒されていたのだった。
(今から、あの人と殺し合いをしなければいけないの……)
美怜はそう思いながら、榊の方に視線を向けた。彼は壁に掛かっていたコンバットナイフを手に取り、こちらに向かって来ていたのだ。
「一思いには殺さないぜ……切り刻んで殺してやるよ」
彼は手にナイフを持つと表情が変わり始め、歪んだ笑みを浮かべていたのだ。
男の目はギラギラと輝いており瞳孔は大きく開いていたのである。
「ひぃ……」
美怜は彼が徐々に迫ってくるのを見て、後退りしていたのだが、あっという間に彼女に近づいてきたのであった。
「来ないで!」
彼女はそう叫ぶと、榊がナイフを振り上げてきたのである。男はナイフを軽く持ち手首のスナップを利かせるように美怜の肌を切り裂いたのだ。
「きゃっ!」
咄嗟に右手を前に出すとシュっという音がし右腕に鋭い痛みが生じたのである。痛みで悲鳴を上げ、右腕の掠り傷から血が滲み出していた。
「ヘへへ……女の肌から血が滴り落ちる様子は興奮するねぇ~~。しかも、綺麗なネエチャンだしよぉ!」
榊はそう言うと、ナイフをクルクル回し始めたのだ。美怜は隙を見て離れようとするが、彼の動きの方が速く回り込まれてしまったのである。
「逃がさないぜ……」
男はそう言って不気味に口角を上げ、ナイフの刃先を美怜に向けてきたのだった。彼がジリジリと迫ってくるのを見て彼女は恐怖で足が竦んでしまったのだ。
(殺される……)
彼女の脳裏にはその言葉しか浮かんでこなかったのである。そして、男の手がスナップを利かせ何度も彼女の肌を切り裂いた。
「いやああああ!」
手足・体をナイフで切り裂かれ、全身から血がポタポタと床に落ち足元には血溜まりが出来てきたのだ。
「いいねぇ……その悲鳴は最高だぜ」
榊がそう言って、美怜の血が付いたナイフを舌で舐めたのである。彼女は痛みと恐怖で体が震え始めていたのだ。
「もう……やめて……」
美怜がそう懇願するが、彼は聞く耳を持たずニタニタと笑みを浮かべている。そして、榊はナイフを逆手に持ち替えてきたのだ。
「いくぜ! 止めを刺してやる!」
男はそう叫ぶと、ナイフを美怜に向かって突き出したのである。その瞬間、彼女の頭の中に別人の声が聞こえてきた。
(美怜……私に身を委ねろ……)
その声は彼女の名前を呼ぶ声であった。そして、声が聞こえてから身体の動きに違いが表れ榊の突きを即座に回避したのだ。
「何っ!」
彼は止めの突きを回避されたと知ると、驚きの声を上げ彼女の空気が変わりつつあることに警戒していた。
美怜は自分が、榊のナイフを躱した事に驚愕したのであった。
「何故、俺の攻撃を避けれた?」
彼はそう聞いてきたが彼女は何も答えなかったのである。そして、美怜は頭の中の声に問うていのだ。
「あなたは誰……?」
(私は、お前自身だが別人格だ。私に身を委ねろ……そうすれば、あいつに勝てる)
美怜は心の中で問い掛けると、彼女の中にもう1つの人格が存在していたのだ。その人格は冷淡で口調も男のようだった。
そして、彼女はその人格に身を委ねることにしたのである。
「分かった……」
そう言った瞬間、美怜自身の記憶は途絶えてしまったのであった。
「何をブツブツ言ってやがる! 死ね!」
榊はそう叫び、ナイフを美怜に向かって振り下ろしてきたのだ。その刹那、美怜の体が動き彼の攻撃を回避するように躱したのであった。
「何だと!」
彼女の態度が急変し驚きの声を上げていた。美怜の顔が段々と変わっていき眼光が鋭く、冷酷で無表情な顔付きになっていたのだ。
そして、壁際まで素早く後退していくと得物を手に取る。
(こいつ……雰囲気が変わった?)
不可思議に思っていると、彼女から低い声が聞こえていたのであった。
「よくも私の体を切り刻んでくれたな……その行いは万死に値する!」
その声は美怜の声ではなく、別の人格が喋っているのであった。その人格は男の口調で芯の強い性格だったのだ。
「何だと! お前は、先程までの女じゃないな! そうか……別人になったのか……」
彼はそう言って身構えると、右手にコンバットナイフを構え左手は胸の高さまで上げていたのだ。
対して美怜の右手には「く」の字に刃先が湾曲した鎌の様な形をした刃渡り40cm以上の大型ナイフであった。
「ククリナイフか……リーチ差があるな……。おい! このナイフだと不利なので他のナイフに変えたいから、ちょっと待ってくれ!」
榊はそう叫ぶと、壁に飾られていたナイフを1本手に取ったのだ。そして、美怜にそのナイフを見せびらかすようにしていたのである。
「俺もククリナイフを使わせてもらうぜ……重心が刃先にあってな、振り回せば破壊力抜群なんだぜ!」
そう言って、同じような重量のあるククリナイフの刃先を美怜に向けてきたのである。
「さあ、殺ってやるぜ!」
そう叫ぶと、榊がナイフを振り上げ美怜に迫ってきたのである。そして、彼は振り上げたククリナイフで斬り掛かってきたのだ。
美怜はその攻撃をナイフで受けると、刃がぶつかり合って火花が散ったのである。
「ほう……俺の攻撃を受け止めたか……今のお前はやるな……」
彼はそう叫ぶと、素早い動きで次々と攻撃をしてきたのだ。美怜は次々と彼の攻撃を受け流していく。
しかし、ナイフを振り回すスピードが速くなると彼女の体に切り傷が増えていったのだった……。
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