第九話 やさしい風
「ピーッ!」
試合終了を告げるホイッスルが利堂総合運動場に鳴り響く。
吉田体育大学附属高校は二点差を守り切り、決勝に駒を進めた。
僕はホイッスルを聞いた瞬間、両腕を真上に伸ばす。
「よし……! 決勝だ……!」
そう言葉を発した僕の表情には自然と笑みがこぼれる。
両腕を下げ、正面を向くと、ある人物の顔が僕の頭の中に浮かぶ。
僕は無意識にその人物の名前を囁くように発する。
「幹恵ちゃん……!」
それからすぐ、僕の視線は自身の足元に向く。
僕の目には、幹恵からプレゼントされた、黒いスパイクが映る。
この時は、光を全く放っていなかった。
しかし、僕は何も不思議に思うことなく、口元を緩める。
「魔法のようで、魔法じゃないスパイク。幹恵ちゃんがプレゼントしてくれたスパイクが、準決勝という舞台で僕の活躍を演出してくれたよ。次はいよいよ決勝。出番があるかは分からないけど、絶対に勝って、全国に行くからね……!」
僕が幹恵に言霊を贈ってからすぐ、何かを伝えるように、僕の背後からやさしい風が吹き抜けた。
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