第四話 暗示
「ピーッ!」
試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと、僕はゆっくりとベンチから腰を上げる。
ピッチ上では、吉田体育大学附属高校のイレブンが笑顔でハイタッチを交わしている。
「初戦突破……!」
僕は囁くように言葉を発する。
嬉しいはずが、僕の心には悔しさのようなものがふつふつと湧いてきた。
僕はこの一回戦で、出番がなかった。
いや、この試合もと言うべきか。
僕はいつ、公式戦のピッチに立つことができるのだろう。
心でそのように呟くと同時に、自身に対しての苛立ちを覚える。
しばらくして、吉田体育大学附属高校のイレブンがベンチに戻ってきた。
僕は心に抱えた自身に対する苛立ちをなんとか抑え、イレブンと笑顔でハイタッチを交わす。
イレブンはその後、ベンチ内で水分補給をし、笑顔で言葉を交わす。
僕はそんな彼らの後ろ姿を眺めながら、自身に言い聞かせるように力強く言葉を発する。
「俺も、ピッチ上で勝利の輪に加わることができるように……!」
その言葉からすぐ、自身の足元に視線を向ける。
僕の目に映る、幹恵がプレゼントしてくれた黒いスパイクは、試合前よりもつやのようなものが加わっているように見えた。
これは、なんの暗示なのだろう……。
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