No Magic ~あの子がプレゼントしてくれたサッカースパイク~

Wildvogel

第一話 何かを起こしてくれそうなスパイク

史也ふみや君、はいこれ」



 七月のとある日曜日の昼間、僕は近所に住む一人の女性から一足のサッカースパイクをプレゼントされた。


 僕の両掌の上で、黒いスパイクは太陽により、微かな光を放った。


 僕はしばらくスパイクを眺め、視線を女性に移す。


 女性は僕の目を見つめ、やさしい声を発する。



「史也君、スパイク買い換えたいって話してたでしょ? それに、もうすぐ史也君の誕生日だし、スパイクをプレゼントしようかなと思って、買ってきたの。サイズは二十七センチでよかったっけ?」



 女性の問いに、僕は笑顔で頷く。


 

「ありがとう、幹恵みきえちゃん」


 

 僕がお礼の言葉を述べると、正面に立つ十九歳の大学生、吉岡幹恵よしおかみきえは笑顔を浮かべる。



 僕と彼女は幼少の頃から一緒に遊んでいた仲で、姉と弟のような関係に近い。


 

「どういたしまして」

 


 幹恵の表情を眺めた僕は再び、視線をスパイクに移す。


 それからすぐ、しっかりとした造りのスパイクは、更なる輝きを放つ。


 その瞬間、僕はふと思った。



 もしかしたら、このスパイクが何かを起こしれるかもしれないと……。

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