第1話

 それはまるで、映画のワンシーンのようだった。

 

 久しく見ていなかった揉め事のようだ。

 宿も借りている酒場の中央で一人の少女が、複数の男に囲まれている。

 俯き怯えている様子で、助けを求める事もなかなか出来ないらしい。


 それでも、


「・・・助けて」


 ようやく絞り出したその言葉に、嘘はひとかけらも無かったから!


「わかった」


 この酒場で、オレの行く手を遮ろうとするものは、この新参の連中だけだ。

 無人の野を歩くかのように接近、男達の囲みを突破すると、少女の傍らに立った。

 困惑する男達、いつオレが囲みをすり抜けたのか、わからないのだろう。


「大丈夫だ、もう何も、こわくない」

「・・・え?」


 いざ傍らに立ってみると、驚く程洗練された外見を持っていた少女は、最近流行りの職業“魔法少女”だった。

 婦女子が滅多に立ち入らないこの酒場では、目の毒でもあるし、飢えた男達の標的となっても仕方がないだろう。


「・・・貴方は? ・・・貴方が?」

「?」


 言葉の意味を探ることは禁じていたので、この時の彼女の真意は未だにわからない。

 様子のおかしい、無言で詰め寄ってくる男達の事をもっと良く観察していたのなら、結果は違っていたのかもしれない。


 教訓、怠惰は身を滅ぼす。


「・・・バン」


 天井に向けて、指鉄砲を一つ。それだけで、囲んでいた男達をなぎ倒したオレ。

 この時の、アサヒの陶酔しきった表情と言ったら! ダレカタスケテ。

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