ばあちゃんのお友達

ツヨシ

第1話

ばあちゃんちに行くことになった。

どうしてそうなったのかは、よくわからない。

両親も口を濁したり話を逸らしたりで、はっきりとは答えてくれない。

――どうして、いまさら?

こうきはもうすぐ十七歳になるが、母の母であるばあちゃんには一度も会ったことがない。

それも充分におかしなことだが、今になって理由もわからないまま、そのばあちゃんに会うことになったのだ。

来月に。

あと半月ぐらい、ある。


ある日、こうきがトイレに行こうと居間の近くを通ると、父と母が話しているのが聞こえてきた。

「でもうちの母は、やっぱり」

「もう、会うことは決まったから」

「でもあの家は、やっぱり」

「もう行くことは決まったから」

というような会話だ。

こうきの母は渋っているが、父がそれを押し返しているような会話が。

会話の内容から、こうきがばあちゃんち行くことについて話し合われているようなのだが。

――会ったことのないばあちゃん。何か問題でもあるのか?

しばらく聞いていたが会話は堂々巡りで、なにも進展がなかった。

具体的な話もまるで出てこない。

こうきはトイレに行き、自分の部屋に帰った。

父と母の会話は気になった。

しかしこうきは、なんとなく聞いてはいけないような気がして、父と母にはなにも言わなかった。


ばあちゃんちに行く日となった。

父の運転する車で。

母は見送りにさえ出て来なかった。

ばあちゃんちはとんでもない山奥だ。

途中からひどい山道となり、そこを随分走ったと思える頃に、ようやく着いた。

同じ県内でそれほど離れているとは思えなかったのに、こうきの家から二時間以上かかった。

最後に誰かの家を見てからも、三十分は経っている。

まさに秘境の一軒家だ。

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