第2話 始まり
ピピピピピ
めざましの音が鳴り響く。
…うん?鳴り響く?
「うわぁぁぁ寝坊したぁぁ!!」
叫びながら二階の自室から階段を降りリビングへ走る。祖母があきれ顔で朝食を先に食べていた。
「またかいあんたはよく寝るねぇ、はい今日の朝ごはん」
「うんまそーー頂きます!」
祖母の作る朝食のトーストはいつも美味しい。そして尚かつ飲み込みやすい。忙しい現代人を支える神朝食だ。
「…あんた、高校はどう?楽しい?」
同じく食卓を囲む祖父から問いかけられ、どうしても質問に答えたいあまりトーストを飲み込まずに答えた。
「うん!超楽しい!!」
鏡に映る自分はなんとも、”それ”らしいツインテールの高校生だ。
「あぁ、耳飾りつけてない!」
左耳に懐かしの耳飾りをつけ、再び鏡を見る。そこでようやく自分が完成したような気がした。
「行ってきまーーーす」
「はいはい、遅刻しないようにねー」
祖母からの忠告は守れなかった。
教室のドアを開くと、すでにクラスメイトは全員席に座り、担任が教卓の前で話をしていた。ホームルームが始まっていたようだ。
「お前また遅刻か!反省しないのか!」
クラス全体の視線が私に刺さる。
「歌楽えがお!」
「てへーそれほどでもー」
「褒めてない!座れ!!」
席に座ると隣の席に美少女がいた。名前は弥生きいこ。珍しい名前だ。黒の細リボンを髪にはちまきのようにまいたボブヘアがチャームポイント。眼鏡をかけていて隠れがちだが、とても顔の作りが良いように感じる。
「おっはよーきーこちゃん!今日も早いね!」
「えがおちゃんが遅いだけじゃないかな…、今日は何人の人を助けてきたの?」
「今日?ええと…4人?」
登下校の時間、私はなぜか毎回困っている人々に遭遇する。
道に迷う外国人旅行客、荷物を重そうに抱えるおばあさん、迷子の小学生、白杖で不安そうに信号待ちをする女性…。
毎日人助けをしているため、現在10連遅刻中だ。もちろん悪い気はしない。
「もう、少しは自分のことも大切にしなよ?」
「はーいらじゃーらじゃー!」
「そこ2人!うるさい!」
「「はぁーい」」
そんなこんなで1日が始まる。
体育ではバスケでシュートを7点分決めた。
昼休みにはお弁当を家に忘れたのでクラスメイトから一つずつおかずを分けてもらった。
英語の時間は分からなすぎて寝た。
あ、美術の授業は好きなので起きてみたりした。
キーンコーンカーンコーン
「もう1日終わるとか早ー」
「ほとんど寝てたからねぇ」
「ぐっ」
きいこの鋭い突っ込みに心が痺れた。
まぁ、良い。事実なのだから。
それよりも今は急いで向かわなければならない場所がある。
「えがおちゃん?今日さ、もしよかったらこのあと自習付き合ってくれない?」
ホームルーム後足早に教室を出ようとする私をきいこが引き留めた。
一瞬何と説明しようか迷ったが、オブラートに包み隠すことにした。
「ごめん!…私、用事あるから!」
学校を出て、バスに乗って30分。
まぁ30分なんて寝れば一瞬だ。
馴染みのバス停でバスを降り、3分ほど歩けば目的の場所にたどり着く。
”隠石プロダクション”と書かれた看板。
私、歌楽えがおは、この芸能事務所に所属し、アイドルとして活動しているのだ。
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