第38話

「どうかしましたか?」


「はい、あの、…これ!」




俺はうまく言えなくて、咄嗟に手に持った創部(創同好会)届けをぐいっと前に差し出した。




ドキドキドキドキドキドキドキドキ




うわー。


異常に緊張する。




目を閉じて両手をぴんと伸ばし、相手が受けとるのをひたすら待った。




……。


なんか、ラブレターを渡してるような気分だ。


いやだから、気持ち悪いぞ。俺。


そもそもラブレターなんて書いたことないし。




なんて、どうでもいいことを考えていると、




「どれどれ、なにかな?」




そんな言葉と共に、ついに書類が手元から離れた。


顔をあげると、軍手を外した教頭先生が手に取った創部(創同好会)届けを見ている。




「陸上部ですか。なるほどなるほど」


「は、はい!」




うんうん頷きながら上から下までゆっくり目を通していくのを、俺はまだ緊張の面持ちで見つめていた。




大丈夫かな。




ドキドキドキドキドキドキドキドキ




あぁ。今度は判決を受ける被告人の気分だ。


って、やっぱり裁判なんて受けたこともないけど。


当たり前か。

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