第17話

今、先生笑った?




やめられんって、


それが走る理由ってこと?




苦しさが和らいで、少し余裕が出てきた。


だから、掴みかけた理由に手を伸ばす。






感じるのは、なんだ?






身体の芯は熱いのに、表面を撫でる空気は涼しくて気持ち良かった。




周りを見回せば流れる景色があっという間に後ろに流れていく。


普段見るそれとは、どういうわかが違って見えた。




まるで万華鏡のようにくるくる移り変わる。




不思議とも思える感覚。




「気持ち良いだろ」




ちらりと顔だけ振り返って、先生が言った。


どこか得意気に。




「はい」




確かに気持ち良いから、俺は素直に頷いた。




もう先生はなにも言わなかった。


俺も、なにも言わなかった。




ただ黙々と走っていた。




「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」




ふたつの呼吸音だけが頭に響いていた。

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