その一中で、私の右目を撃ち抜いて
春日希為
1‐1 その一中で、私の右目を撃ち抜いて
通販サイトで届いた荷物を受け取っためじろは、リビングに段ボールを持ってくると、床に座り込みクリスマスの朝のような少女の顔をして昨日、ミスプリントを破ったときとまったく同じように宛名の印刷部分を破り捨てた。角に置かれている白いゴミ箱の中には、すでに宛名が書かれた紙と印刷ミスをした紙が一緒に丸めて捨てられている。
体格に似合わないほどの段ボールに茶色いリサイクル紙を詰めただけの無為な梱包が施されている。ここで今最も資源を無駄に使っているのはゴミ箱に捨てられたコピー用紙ではなく、この梱包材だろう。中のものを取り出すかわりにめじろの陶器のように滑らかな素足がどんどん茶色い紙の中に埋もれていく。
「ちょっと、昨日掃除機かけたばかりなんだけど」
「今日の掃除当番は私よ。文句なら受け付けないわ」
「あっそ、なら仕方ないね……」
めじろはうんうんと大きく頷き、足の上に溜まった紙をまず退けるところから初めた。お互いに家事は一通りこなせるため。この家でのルールはかなり緩めの当番制で回っている。きっちりした決まりはなく、変わってほしいとお互いに頼めばほとんどの場合二つ返事で交代が行われる。だが、めじろから変わってほしいと頼まれたことは数えるほどしかない。ほとんどは多々良がめじろに変わってもらう立場にあるのだ。バイトに大学になにかと多忙を極め、疲れて帰ってくることの多い多々良のためにめじろは率先して家事を回してくれているからだ。普通の大学生同士のルームシェアならこんなに上手くいかないだろう。
白いテディベアが箱の中で静かに眠っていた。めじろはテディベアの脇を持って、持ち上げて膝の上に置く。
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