「カエルがね…カエルがね…」


雨上がりの夕方、生活道路で小学生の女の子に声を掛けられた


彼女の指さす方を見ると大きなヒキガエルが居た


「足を怪我してる様であまり動けないみたいなんです」


女の子の側にいた母親らしき女性が言う


どうやら怪我をしていて動けないカエルを、車に轢かれる前に安全な場所まで移動させてくれと頼んでるみたいだ


私も女の子と同じ歳位の時にはカエル取りをして遊んだが、大人になった今は両生類や爬虫類は触りたいとは思わない


うちはブラック企業だが知名度の有る会社なので、気に食わない事が有ると直ぐにクレームを入れられる


労働者を粗末にする会社なので、どんなに理不尽なクレームでもドライバーは業績評価を下げられ皆の前で吊し上げられる


そのくせベビーカーを持って階段を登ってあげても感謝の連絡とかはまず会社には来ない


私は大きなヒキガエルに顔を背けながら道路脇の草地に運んだ


「これでいいですかね?」


案の定、親子は一言も言葉を発せずに立ち去って行った





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