日傘が必要なお年頃
つばめいろ
日傘が必要なお年頃
この世界の日差しは人間にとって有毒なところまで来てしまった。一年前からだ。何十分と直接皮膚に当たると身体に症状が出る。だから、外を歩くときは日傘が必須だ。
先日、二年前の事故で意識を失っていた先輩が目を覚ましたという。そして今日、先輩が部室に帰ってきた。昼間なのにカーテンが閉められている部室を不思議そうに見ている。そういうこと何も聞いてないのかよ。思わず心の中でツッコむ。
先輩が
「外に買いに行きたいものがある。一緒に来てくれないか」
なんて言う。心配な気持ちもあるのでついていくことにする。先輩は私が傘を持っていくことを不思議そうにしている。「雨は降ってないぞ」と言われるが真実は教えない。もう少しこの様子の先輩を見ていたい。
玄関から出る時、私は傘を開く。先輩はそのまま外に出る。日差しの強さには気づいていない。
「日傘だったのか。だとしてもこのくらい良くないか」
私に向けられたその笑みがとてつもなく愛おしく感じる。まだ、事実を教えたくないように思う。たとえそれが原因で、先輩が死んでしまったとしても。
日傘が必要なお年頃 つばめいろ @shitizi-ensei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます