雲の世界

学生作家志望

あの日よりも上の場所

はじけて体が軽くなった時、ふわふわとした雲の上に仰向けで寝ていた。目をそっと開けて息を吸ってみた。僕は確かに生きていた。


お母さんは僕をどう思っているかな。怒っているかもしれない。だって、ひまわりに水をやるのも忘れて飛び出したし、ばあばにお線香もあげてない。

まあいっか、だってもう雲の世界にきたんだ。


怒られたりなんかしないさ。


立ち上がって足を動かしてみると、白いわたあめのような雲が僕の足を支えてくれた。すり抜けて落ちることはないし、滑り落ちることもない。夢のようだけど雲の下には僕の住んでいる街が見える。これは現実なんだ。


それから、ずっとずっと街の景色を見ていた。小さな虫は見えないし人間だってアリくらい小さかった。だけど、知っている人のことだったらどこにいるのか、何をしているのかが何故かはっきりと見えた。


それに気が付いたのはかつやが学校から走って出てきた時だ。


何か言ってるような気がするけど遠くて聞こえない。どうしたのかはわからないけどやけに焦ってるみたい。鬼ごっこしてるときはこんなに速く走ってなかったじゃん。僕の足が遅いから手加減してたのかな。


いっつも僕が鬼のまま変わらなかったな。


あれ、なんでだろう。どうして、こんなに悲しいのかな。僕は何でこんな場所にいるんだっけ。


僕は何をしてここにいるのかな・・・・・・?


「しょうちゃん。」


「え、ばあば?ばあば、、」


かつやを見ていた僕の後ろから声がして振り返るとそこには、僕が低学年のころに死んじゃったばあばがいた。僕は気付いたら思いっきり涙と鼻水をたらして服を汚していた。


「なんでばあば、生きてるの?」


僕が小さいころに、綺麗な街が見下ろせる高台までばあばが連れて行ってくれた。虹も見たし大きな雲も、どこまでも続いている飛行機雲も見た。


「ばあば、何かしゃべってよ・・・・・・久しぶりに会えたんだよ。」


「雲の上にもいつか行きたいな、ばあば!」そんなことを毎回言ってたよね。雲の世界まで一緒に行きたいって、言ってたよね僕。


たまらなくなった僕は口を開かないただ立ったままのばあばに、ハグをしようと走った。きっとあの時みたいに喜んでくれるよね。


「ばあば!やっほ!!」


「わ、しょうちゃん!びっくりした!」


あの時みたいに。


「ばあば!!!」


僕が叫んだとき、さっきまで足を支えていたはずの雲が足から離れて、次の瞬間。


僕はベットの上に仰向けになって寝ていた。「回復した!」そんな風に知らない白い服を着た大人の人が言って、それから雲の上から見ていたかつやや、お母さんが僕に駆け寄ってきて、涙を流していた。


そうだ、今日の朝かつやと早く学校に行く約束してたのに寝坊して、急いで家を飛び出たんだ。そしたら、曲がり角のところで車にひかれたんだ。


死んだと思った、ダメだって何回も思った。でもばあばが助けてくれたんだ。



ばあば・・・・・・。僕、頑張るね。


またいつか僕がおっきくなっても、綺麗な景色見せてね。


また、ハグさせてね。

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