第43話 会議

 日本政府にて―。


 日本政府の広い会議室で、大きな円卓周りに約二十人ほどの国の関係者が一堂に集結していた。

 その中に、この国で二番目の実力を持つ霊媒師であり、二階堂家当主でもある二階堂光太もいた。

 そしてもう一人。二階堂同様にして霊媒師である、五十代くらいの黒髪に、前髪の一部分だけ白い髪の束がある男が出席していた。その男は顔にほんの少しの、年相応としたシワがあり、黒いローブを着用していた。

 

 男はこの国でトップの実力を持つ霊媒師―。名を、犬神時一いぬがみときいちという。


 国のトップである総理も出席をして集まっているこの場で今、彼らは国家機密の会議をしている。議題は、国が世間に隠蔽している怪・異・の存在に関するもの。

 その内容は、今現世で、世界を滅ぼすほどの力を持つ最強の怪異にして悪霊―。黒龍が封印された石を、邪悪な何者かが集めているというものであった。

 そして一人、〝怪異特別調査課〟の男がその場で立ち上がり、報告書を読み上げる。

 「我々調査班の調査によれば現在、カゲロウと呼ばれる悪霊とその仲間たちが、黒龍石を集めているとの模様です。すでに彼らは二つ石を所持していると思われます。まだ目的は定かではありませんが、そのカゲロウという悪霊はかなりの力を持っていると思われ、その黒龍石を使って、何か黒い目的を持っているのはたしかです」

 すると、今度は〝怪異特別対策課〟の女が挙手をして立ち上がる。

 「何がともあれ、やはり相手の戦力がわからない以上、我々も厳重に対策をすべきです。総理、どういたしますか?」

 総理は真剣な顔をし、口を開いた。

 「……何か嫌な予感がする。たしかにこれは、厳重に対策をすべきだ。近いうちに、そのカゲロウという悪霊たちと黒龍石を賭けた総力戦になるだろう。二階堂君。石を所持している君も、しっかり石を守り抜け」

 二階堂光太は総理にそう言われ、深々と頭を下げて返事をする。

 「はっ。もちろんでございます。……というより、犬神殿。今まで私が石を保管していたが、やはり石はこの国で一番の実力を持つ貴方に預けたほうがいいのではと、私は思うのだが」

 二階堂は犬神にそう問いかけたが、犬神はそれを拒否した。

 「……俺はそんな責任を負いたくなどない……。……二階堂殿、貴方が管理しろ」

 犬神の言葉は重たかった。その重みが、彼の霊媒師としての実力から滲み出ているものだとわかる。

 二階堂はやれやれと、しぶしぶ承諾した。

 

 そして、これからの対策として、次々にその場にいる者たちが、口を開き始めた。

 「やはりここは人間界だけではなく、からも協力を要請すべきだ!黒龍石の一つを持っている霊界の閻魔大王とも話し合いを!」

 「あと、他からも要請を頼もう!霊・媒・師・学・校・の上位の実力を持った教員と学生や、からも要請を頼むべきだ!」

 「総力戦となればやはり、殿にも協力を」

 

 次々に議論が展開されていく。

 そして、総理が二階堂に声をかけた。

 「二階堂君。今君の屋敷には、君の霊力を込めた結界の札を使って守っているが、念のため君の屋敷にさらに強力な結界を張っておくんだ。黒龍石を狙って奇襲をかけられるやもしれんからな」

 「分かりました、総理」

 二階堂は頷く。


 

 

 そして、今はまだ誰も知らない。

 これから先、この世とあの世を巻き込んだ、人間や怪異たち全ての想像を超える、史上最悪の危機が襲いかかるということを―。

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