こんなことしか書けない

藍田 青

意味

背負った袋の口から

時折こぼれ落ちるものは

いつかの嘘であったり

あの時の惨めだったり


振り向けば

輪郭の歪んだ足跡が

あちらこちらへと よろめきながら

ついてきている


隣には 獅子のように逞しいのが

その隣には 兎のように軽やかなのが

一直線に延びているというのに


行きたかった あの場所へ

辿り着くことは ないだろう


だから

歩くのだ


私は再び前を向く

ずっしりとした袋を背負い直す


全てを うずめるために

歩き続けるのだ


また一歩

私は踏み出した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こんなことしか書けない 藍田 青 @Aida-Ao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ