べレース総合学院

第20話 新しい環境

 入学式は、国歌斉唱に始まり、お偉い方々が長々と話をするだけの無益な時間である。俺は歴代のスタッガードの習慣に従い、入学式をサボって、Aクラスの教室に入った。






「それでは院科長よりご挨拶です」


 その言葉と共に、院科長が壇上に上がる。


「私はべレース総合初等学院院科長のユリス・レ・ヴァルレイラだ。今年は沢山の有望な種に相まみえることが出来て嬉しく思う」


 ユリスが新入生を見回しながら言う。


「今年は例年に比べて特に優秀だ。『五芒星』なんてお粗末な異名なんてつけられて、5人に同情する」


 ははは、と笑い飛ばしながらユリスが言う。


「だが、そんなことはどうでもいい。今年は君たち新入生の中にスタッガードがいる。あのスタッガードだ」

「スタッガードに当てられてやる気が削がれる腰抜けはここにはいないと私は信じている」

「何、何度でも言うが今年はみな優秀だ。遠慮なく高め合い、絆を深め、大いに学院生活を楽しむといい」


 手を机の上に置き、新入生を再び見る。


「ようこそ、べレース総合初等学院へ。我々は諸君を歓迎する」





「あ、アレイン!!久しぶりだね!!」

「シア!!久しぶり!!」


 そうアレインに声をかけるのは、テレシア・レ・ヴァルレイラ。ヴァルレイラ侯爵家の令嬢にして、入学試験を8席で合格した逸材。


「こうして会うのは半年ぶりかしら」

「ええ。私がスタッガードに入ってからは会えなかったものね」

「そうよ!!スタッガードといえば今年の新入生にいるじゃない!!でもいなかったけど、風邪?」

「いいえ、来てるはずなんだけど…」

「じゃあおサボり??」

「…アルらしいわ」

「アルっていうの?!」


 テレシアはアレインにグイグイ来ていた。


「もぉ、シア。早く教室に行かないと。HRに遅れちゃうわよ」

「あ!!いけない、忘れてた!!」


 アレインはそう言い、テレシアと一緒に教室へ急いだ。



「はー!!間に合ったー!!」

「遅いぞ。お前らのせいで俺の残業が増えたらどうする」


 テレシアの渾身の叫びに気だるげに答える教師。


「席は自由だから早く席に座れー。俺の時間を奪うな」

「はーい!!」

「分かりました」


 テレシアとアレインは、アルスの隣に座る。


「じゃあHRを始める…ああメンドクセ、自己紹介だけでいいや」


 そう言い、自己紹介をする。


「俺はロスター…一応ここの担任だ」


 それだけ言い、「ほれ、次はお前らだ」と生徒に自己紹介を促す。


「早くしてくれ。入試時の成績順でいいだろ」


 そう言われ、アルスに視線が集まる。仕方ない、と思いながらアルスは立ち上がる。


「アルスです。よろしくお願いします」


 そう言い、アルスは座る。


「おし、いい自己紹介だ。俺のことを考えてくれてるな、加点してやる」


 ロスターがうつ伏せながらそう呟くのを傍に、自己紹介は続く。


「アヤカ・イチノセです。趣味は剣を振るうことです。よろしくお願いします」


 アルスは横目でアヤカを見やる。


(あれが東方大陸の者か)


 髪と目は黒く、膝まで続くような髪は後ろでまとめてある。

 軽く外見的特徴を見終わった後、アレインが立つ。


「アレイン・レ・アルフォンスです。アルスの婚約者ですので、そこを把握いただいてくださると嬉しいです。よろしくお願いしますね」


 それから、クラス内での簡易的な自己紹介が始まる。


「ソノス・レ・シュバートです。よろしくお願いしますね」

「ミラス・レグ・ドメリアです。ここ学院の場では皇女殿下と呼ばないでいただけると嬉しいです」

「タレス・レ・アレスタイアだ!!強いやつは俺とひと試合やろうぜ!!よろしくな!!」

「レネア・レ・ランツラントですわ。皆様、よろしくお願いいたしますわ」


 これにふたりが続いたあと、アレインの隣に座っている女の子が元気に立つ。


「こーんにちーはー!!私はテレシア・レ・ヴァルレイラです!!みんなと友達になりたいので、仲良くしようね!!」


 活気に溢れる声が教室に響いた。


「テレシア、うるさいから減点」

「そんな!?酷いです!!」


 テレシアが減点され、アレインは抗議をしに行っていた。




 そのままの流れで全員の自己紹介が終わり、次は何をするのかと教壇にいる教師を見ると。


「…」


 ロスターは寝ていた。だが、それと同時に、


「お、遅れました〜!!ってわぁぁあ!!」


 小柄な女性がバタバタと入るが、足がもつれてコケる。


「いたたた…あっ!!ロスターさん!!また寝てらっしゃるじゃないですかー!!起きてくださいよ!!」

「…俺の睡眠時間を邪魔するなよ」

「今は仕事中ですよ!!」

「知ってるか?人の睡眠時間は12時間だぞ」

「そんなにありませんよ!!…ハッすみませんすみません名乗るのが遅れました!!」


 小柄な女性はそう言い、大きな黒板に名を書く。


「私はユヒナ・ザイビークです!!ここの副担任です!何かあれば大人の私にご相談くださいね!!!」


 ユヒナ・ザイビークと名乗るその女性は、胸をぼすんと叩く。その身の丈に合わない豊満な胸が揺れ、一部の男子たちに刺激を与える。


(ミドルネームがない…平民の出か)


「それではみなさんも自己紹介が終わりましたね?じゃあ訓練場に行きましょう!!あ、ロスターさん!!起きて〜!!」

「…俺はこのまま寝る…」

「ロスターさ〜ん!!!」


 ユヒナの悲しみに満ちた声が響き渡った。





──────────────────



蒼です。


まず一言。ここまで読んでくださった方、ご興味を持ってくださった方に感謝を伝えます。

そして、まだ拙い文をわざわざ読んで♡まで押してくださる読者様にも感謝を伝えたく思います。

頑張って執筆しておりますので、☆や♡で応援してくださるとスピードが上がります。是非押してください。


作者からでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る