第45話 私達が必ず助けを呼んできます!


 悠真、零がティーを嗜んでいる頃、岸辺班は驚くべきペースで2階層を攻略していっていた。

 

「モンスターはA級ダンジョンに相応しい強さ、だけど私達のコンビネーションにかかれば、このくらいは余裕だね」


 そう当然のように語るのは、ここまで班を率いてきたB級冒険者、岸辺総一郎。


「そりゃ全モンスター、岸辺さんの重力魔法に逆らえないんですから」


「いや、豊田くんの樹を使った攻撃も中々だよ」


「いやいや、そんなことないですよ! でもまぁこの感じだと今日中に3階層いけそうですね」


 一頻りお互いの実力を認識したところで別の話へと切り替わる。

 総一郎は、マッピング兼魔力感知係の工藤陽菜へ今の進捗具合を尋ねた。


「工藤さん、後どれくらいで2階層を突破できそうですか?」


「え、えと、そうですね……このペースだと、だいたい1時間もかからない内に3階層へ続く階段へ辿り着くとは思います」


 彼女は浮かない表情でそう答える。

 自分達がスムーズに進む中、自身のパートナーである陽介が、友人である海成がどういった状況なのか気が気でないからだ。

 一応魔力感知で彼らの気配は感じるので、無事であることは間違いないようだけれど。


 それにここまでで、お互いの班仲は最悪。

 岸辺班のリーダーやこの豊田って男は、確実に早川班のことを下に見てる。

 明らかに態度を表に出す2人にも腹が立つし、それを止められない自分にも腹が立つ。

 そんな様々な感情が自分の中に渦巻いていて、本心ではダンジョン攻略そっちのけになってしまっている様子。


「やっぱり僕達のチームは最強ですよ! どうせなら、このままいっそ正式にパーティ組んじゃったり?」


 豊田は上機嫌に仲間へそう息巻く。


「えっ! いいですね!」

「たしかにこのメンバーならどんなダンジョンでも行けるかも!」

 

 他のメンバーもどうやら満更でもないようで、賛意の声がよく目立っている。

 もちろん心境的に複雑な陽菜は肯定も否定もしていない。


 総一郎も彼女と同様の表情だった。

 彼自身あくまでS級ダンジョン踏破を目指しているため、今の実力、今のパーティに満足しているわけではない。

 今後さらなる高みを目指している総一郎にとって、そもそも眼中にない話だからだ。


「……ま、待って! ヤバいかも!」


 声を荒げたのはサポート役の女性。

 陽菜と同様に魔力感知を行うことのできる冒険者だ。


 その声にいち早く反応した陽菜は状況を即時に察知し、魔力感知の範囲を大幅に広めた。


「どうしたんだ?」


 不安げな様子で豊田はサポート役2人に現状を確認している。


「この魔力総量、ボス級……っ!? なんでこんなところに!?」


 陽菜はそう声を張り上げたことで、一同は完全に警戒態勢。


 実際に魔力を感知できる2人は今コチラに迫ろうとするモンスターの莫大な魔力量に、強い畏怖の念を抱いている。


 しかしその反面、岸辺班のアタッカー陣営は別。

 彼らはこれまでの冒険者経験や現在の攻略状況からして、どんなボスが来ようとも対応できる、そんな満ち溢れた自信があるのだ。

 特に豊田は、寧ろ向こうから来てくれてラッキーとまで思っている。


「岸辺さん、僕達で迎え撃ったりましょう!」

 

 威勢よくそう言い放つ豊田。

 そんな中総一郎は、突如として迫ってきた殺意に気づいた。


「豊田くん、危ないっ!」


「え、何がです……」


 ザシュッ――


 時すでに遅し。

 総一郎がその気配に気づいた時には、もう豊田の首は宙を舞っていた。

 残った豊田の首から下は、切断部位から鮮血が噴水のように溢れ出す。


 そしてその前に立ちはだかるエメラルドグリーンの鱗に覆われた竜人。

 零によって使役されたダンジョンボス、バルムガルムである。

 

「ヒィッ!?」


 陽菜含めた女性達の短い悲鳴。

 と、一瞬取り乱したものの、皆冒険者としての経験も程々に長い。

 手足の震えを一生懸命抑え、なんとか恐怖から立ち直ってみせた。


「邪魔、するやつは、排除、する」


 竜人は手に持った西洋剣様の武器を構え、一目散に彼ら冒険者へ迫り寄る。

 そして一瞬にして陽菜の前へ、今まさにサポート役の陽菜へ剣が振り下ろされようとする瞬間、バルムガルムの動きが突如として停滞した。


「……そうは、させないよ!」


 総一郎である。

 彼の放った全力の重力魔法は、A級ダンジョンボス、バルムガルムの動きでさえ完全に止めてしまえるほど強力なものだったのだ。


「誰、だ? 我の、邪魔、を、する、者は?」


 重力魔法により動きを封じられたはずの竜人。

 本来動かすのが困難な状況の奴は、全身に力を込め、ゆっくりと総一郎へ体を向けていく。

 そして一歩、また一歩と歩みを進める。


「重力魔法だけじゃ抑えきれないか……っ!」


「岸辺さんっ!」

「総一郎さんっ!」


 バルムガルムが総一郎に迫っているというこの状況に気が気じゃない他の冒険者メンバー。


「今のうちに助けを……っ! このダンジョン内に煌坂先生がいるはずだから!」


 総一郎はB級の中でもA級に近い実力を兼ね備えている。

 しかし今対峙している竜人を見て、自分が敵う相手じゃないことはすぐに分かっていた。

 ならば数々のダンジョンを踏破してきた煌坂悠真ならコイツを倒せるんじゃないか、そう思った故の行動だ。


 そしてそのための足止め、これは総一郎しかいない。

 この中で1番実力が高く、相手の足止めにも使える重力魔法の使い手だからだ。


 さらに援軍を呼ぶためには、魔力感知で他の冒険者の位置を知る必要がある。

 つまり総一郎が足止めをし、他のメンバーで助けを呼びにいく。

 この結論に全員が辿り着くのはごく自然のことなのだ。


「分かりました! 私達が必ず助けを呼んできます!」


 陽菜を先頭としたサポートメンバーはその場から走り出す。

 そして向かったのは、陽菜がここに来て何度も魔力感知を使って居場所や安否を確認していた対象。

 そう、早川班の元だ。




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ごめんなさーい!

ストック切れちゃいました!!


作者のコロナやコロナ明けの激務やらで、なかなか書く時間が得られず💦


最近は2、3日に1話くらいの仕上がりだったので、それくらいを目処に更新する予定です!

一応ここのA級ダンジョン編までを区切りにさせてもらおうと思いますので、予定としては残り10話から15話で完結する形で考えてます🙇


どうぞこの後もよろしくお願いします‼️



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