第26話 最後通告

 シュヴァルク王国カイゼルス王の最後通告の手紙が届いた。



『勇者エルドよ、お前の潜伏している辺境の地ゼルファードはティアナ姫をゾンビにした罪深き村だ。貴様もろとも滅ぼす必要がある。

 女子供関係なく、全てが悪魔の子であり罪人である。

 慈悲はない。妥協もしない。ゼルファードは跡形もなく消えるのだ。

 抵抗しても無駄だ。

 こちらには三千の上級職がいる。

 エルド、お前に勝ち目などない。

 勝とうと思うな。その首を素直に渡せ。さすれば聖女オーロラの命だけは救おうではにか。

 返答をする場合は、ひとりで森を抜けてこい』



 これは間違いなく、カイゼルス王の直筆。

 目を通すだけで吐き気を催した。


 なんだこれは!

 ふざけるな!



 女子供も皆殺しするってことかよ。なんて王だ。最低かッ!



「どうかしましたか、エルドさん」

「カイゼルス王から手紙だ」


「王様から!?」



 手紙をオーロラにも呼んでもらった。途中で目を背け、返品してきた。



「……どう思った?」

「これはヒドイです。王様がこんな人だったなんて……」



 やはりそう思うよな。これが普通の反応だ。

 クレミアとラフィネにも目をお通してもらったが、同じように不快感を示した。



「とはいえ、我々には女神の力で守るしか手段がありません」

「クレミアさんの言う通り。反撃は厳しいですね」



 二人とも不安を漏らしていた。

 俺も女神はどこまでやれるか確証がなかった。


 あれからアルミナは、瞑想をするだとかで俺の部屋に入って帰ってこない。


 大丈夫かなぁ……今夜には総攻撃が始まっちゃうんだがな。



 そんな空気の中で監視役が俺の家に駆けつけてきた。



「失礼します、エルド様!!」

「どうした?」


「ゼルファードの周辺に三千の勢力を確認! シュヴァルク王国の上級騎士や魔導士たちです。そして、カイゼルス王の姿もありました」



 とうとうここまで来たか。

 今回はゾンビ兵ではない、本物の人間だ。


 まさか本当にこの日が来ようとはな。


 正直、戦争は避けたかった。

 同じ国の者同士で戦うことも勇者としてはしたくなかった。


 だが、俺はゼルファードが好きだ。村人のみんなも好きだ。オーロラやクレミア、ラフィネにタル。


 みんながいてくれたから、俺はここにいる。



 取られてなるものか、この幸せを!



「解かった。引き続き監視を頼む」

「了解しました」



 直ぐには攻撃してこないはず。俺の返事待ちのはずだからな。


 監視役を入れ替わるようにしてタルがやってきた。



「……エルド殿。このままでは村が!」

「大丈夫です。女神は降臨済み。防御結界で凌ぎます」


「本当にゼルファードを守れるのでしょうか」

「信じてくれ。俺は少しの間だけどアルミナと同じパーティだった。魔王軍幹部を倒すためにね」


「ならいいのですが。お願いししますぞ、エルド殿」



 タルは去っていく。

 俺は自室へ向かい、女神アルミナの元へ。


 そろそろ防御魔法を展開してもらう。

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