サトルの章『交錯する正義』
モニタリングルームの男
薄暗いモニタリングルームの一角に、サトルは一人座っていた。
画面には、ゲームの中で苦しむユウスケの姿が映し出されている。
「お前が、こんなところにいるなんてな…。」
サトルは呟き、ため息をついた。
同僚であり親友だった男が、このような残酷なゲームに巻き込まれている事実を、彼はまだ完全には受け入れられずにいた。
サトルの背景
サトルとユウスケは、警察学校時代からの付き合いだった。
「俺たちで、この街を守るんだ。」
ユウスケが熱く語るたびに、サトルは小さく笑っていた。
「正義感が強すぎるのも考えものだぞ。」
だが、そんなサトルもまた、正義を信じる一人だった。彼はユウスケと共に数々の事件を解決し、警察内部で「最強のコンビ」と称されたこともある。
しかし、ある事件が彼らの道を分けた。
決裂のきっかけ
それは、密売グループを摘発する捜査の最中のことだった。
ユウスケが密売グループのリーダーに取引を持ちかけられたあの夜、サトルも現場にいた。
「ユウスケ、お前、何を考えているんだ?」
サトルはユウスケの妥協的な判断に激怒した。
「今ここで全員を救うのは不可能だ。」
ユウスケは苦渋の表情で言った。「だが、せめて一人でも多くを救うためには、こいつらの取引に応じるしかない。」
「それが正義だと思うのか?」
サトルはその場を去った。
サトルの転落
その後、密売グループは摘発されたが、逃亡者が再び活動を再開し、多くの命が失われた。その責任を痛感したサトルは、警察を辞職した。
「正義なんて綺麗事だ。」
酒に溺れる日々の中で、サトルはその言葉を何度も呟いた。
だが、ある日、彼はユウスケがデスゲームに参加しているという話を耳にする。
「ユウスケが…? 何でそんなことに巻き込まれているんだ…?」
モニタリングルームへの潜入
サトルは独自に情報を集め、ゲームの主催者の一部に接触する。かつての警察時代のコネクションを利用し、モニタリングルームへの潜入を果たした。
「お前がここに何の用だ?」
主催者の一人が冷たく問いかけた。
「彼を救うためだ。」
サトルは短く答えた。
「救う? 面白いことを言うな。このゲームは彼自身の選択の結果だ。」
その言葉にサトルは歯を食いしばりながらも、画面を見つめ続けた。
影響を与える選択
モニタリングルームでは、関係者が記憶の返還や削除を決定するシステムにアクセスできる。サトルはその端末を見つけ、ユウスケに干渉するか否かを迷った。
「今ここで記憶を返しても、彼が苦しむだけだ。だが…このままでは…。」
その時、ユウスケが画面の中で呟いた。
「俺は…あの時、間違っていたのかもしれない。」
その言葉を聞いたサトルは、震える手で端末を操作した。
「お前には、この記憶が必要だ。」
彼が選択したのは、ユウスケが「かつて救えなかった人質たち」の記憶を返還することだった。
サトルの覚悟
記憶が返還されたユウスケは、画面の中で苦悩の表情を浮かべた。だが、その瞳には新たな決意が宿っていた。
「これが…俺の背負うべき罪だ。」
サトルは静かに画面を見つめながら呟いた。
「ユウスケ、お前がその記憶をどう乗り越えるのか…俺には分からない。だが、お前なら…。」
交錯する道
その後、モニタリングルームから追い出されたサトルは、静かな夜の街を歩きながら思った。
「正義なんて、形を変えるものだ。」
彼は自分の行動が正しかったのかどうか、確信は持てなかった。それでも、ユウスケが「自分の正義」を見つけることを願わずにはいられなかった。
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