第4章『操られる記憶』1

課題16の結果発表が終わり、返還された記憶がそれぞれの心に新たな重荷をもたらしていた。

しかし、部屋の空気は冷え切ったまま。特にアイリ(8)の沈黙は異様な存在感を放っていた。


アイリの沈黙を深掘り

アキラ(1)は再びアイリに声をかける。


「…アイリ、大丈夫か?」

その声には、リーダーとしての責任と、1人の人間としての心配が滲んでいた。


しかし、アイリは微動だにせず、ただ虚ろな瞳で何かを見つめている。

「…私には…。」

かすかに聞こえたその声は、自分に向けたものなのか、誰かへの呟きなのか判別がつかない。


ミカ(3)が彼女のそばに座り込む。

「無理しないでください、アイリさん。」

ミカの優しさに反応したのか、アイリは一瞬だけ視線を動かした。


だが、レンジ(9)は冷ややかに言い放つ。

「構うな。壊れる奴は壊れる。それだけのことだ。」


「そんな言い方…!」

ミカが反論しようとするが、レンジはそれ以上何も言わず、視線を外した。


無機質な声による休息の指示

「これより2時間の休息時間を与える。」

ホログラムスクリーンが暗転し、部屋全体が柔らかい間接照明に包まれる。


壁が静かにスライドし、簡素な休憩スペースが現れる。テーブル、椅子、飲料水、軽食――最低限の設備が整えられていた。


「飲食物と衛生設備は提供される。ただし、行動はモニタリングされている。」


休息時間中の参加者たち

アキラ(1)の独白

アキラは端の席に座り、軽食には手をつけず深く息をついた。

「ナナ…俺はお前を救ったつもりだった。それが間違いだったなんて…。」

返還された記憶の断片が、彼の胸を締め付ける。


ミカ(3)とアイリ(8)のやり取り

ミカは休憩スペースに向かわず、アイリのそばに座り続けていた。

「アイリさん、無理しないで…。何かあったら話してください。」


しばらくの沈黙の後、アイリが静かに口を開いた。

「…大丈夫。私は…平気よ。」

その声には決意とも疲労とも取れる響きが混じっていた。


レンジ(9)の観察

レンジは軽食を取りながら周囲を観察していた。

「この状況で、次に動くのは誰だ?」

冷静な目で全員の様子を探り、特にサクラ(2)の動きを警戒しているようだった。


サクラ(2)の振る舞い

サクラは飲料を片手に、場違いなほど軽やかな笑顔を浮かべていた。

「ねえ、みんな少しはリラックスしようよ!疲れた顔してたら、次の課題で勝てないよ?」


ユウスケ(4)はその言葉に苛立ちを隠せない。

「その能天気さが一番怖いんだよ…。」


『モニタリングルーム』

権力者たちはスクリーン越しに参加者たちの様子を見ていた。


「アイリの反応が興味深い。」

権力者Aが冷笑を浮かべる。

「返還された記憶には、全員を繋ぐ重要な情報が隠されている。だが、それを明かす前に彼女が壊れるかもしれない。」


「それもまた一興だ。」

権力者Bが楽しげに笑う。「このゲームが彼女をどこまで追い詰めるか見ものだ。」


課題17の開始

休息時間が終了する直前、無機質な声が再び響く。


「これより次の課題を開始します。」


ホログラムスクリーンが点灯し、新たな課題内容が表示される。


課題17『真実の崩壊』


課題内容

「これまでの課題で返還された記憶を基に、“全員が繋がっている理由”を導き出せ。」

「正しい結論を導き出せた場合、課題は成功となり、全員に記憶が2つ返還される。」

「結論が間違っていた場合、課題は失敗となり、全員が記憶を3つ失う。」


無機質な声による補足

「この課題では、過去の記憶とそれぞれの行動を照らし合わせ、隠された因果関係を導き出す必要がある。」

「制限時間は60分。これより課題を開始する。」


ホログラムの光が参加者たちを照らし出し、誰もが重い空気の中で動き出した。


ホログラムスクリーンが点灯し、課題の詳細が明らかになる。


「課題17: 真実の崩壊」

「これまでに返還された記憶の中から、全員を繋ぐ“共通点”を導き出せ。」


課題のルール

無機質な声が部屋中に響く。


各プレイヤーは、返還された記憶を元に“共通点”を見つけ出す。

記憶を突き合わせ、全員で1つの「真実」を結論として提出すること。

成功条件: 提出された結論が全員を繋ぐ正しい共通点である場合。

失敗条件: 結論が誤っていた場合、全員が記憶を3つ喪失し、ランダムで1名が退場する。

報酬:


成功すれば、全員に記憶が2つ返還される。

失敗すれば、さらなる罰が下る。

「制限時間は60分。議論を開始してください。」


議論の開始

課題が始まり、部屋には不穏な沈黙が広がる。


アキラ(1)のリード

「全員を繋ぐ“共通点”か…。」

アキラは眉間に皺を寄せる。「これまでの記憶を整理しなければならない。」


ユウスケ(4)の苛立ち

「共通点なんて、本当にあるのか?」

ユウスケは険しい表情で呟く。「俺たちはそれぞれ別の人生を歩んできたはずだ。」


レンジ(9)の冷静な推測

「共通点があるからこそ、俺たちはここに集められたのではないか?」

レンジが静かに言う。「それを暴くことが、この課題の目的だ。」


記憶の共有

参加者たちはそれぞれの返還された記憶を共有し始める。


アキラ: 「ナナという少女を救おうとして、多くの犠牲を生んだ記憶。」

サクラ: 「特別な力を持ち、それで他者を操った記憶。」

ミカ: 「助けた人物が復讐に走り、命を奪った記憶。」

ユウスケ: 「自分の不正が原因で仲間を死なせた記憶。」

レンジ: 「命を奪った相手が裏切り者ではなかった記憶。」

共通点を見つける手がかり

ミカの考察

「私たちはみんな、誰かを守ろうとしたり助けようとした結果、逆に悲劇を生んでいる気がする…。」


サクラの挑発

「それだけじゃないよ。」

サクラが笑みを浮かべる。「私たち、他の誰かの“駒”みたいに扱われてるんじゃない?」


残り時間30分:核心に迫る

アイリ(8)が静かに口を開く。


「…私の記憶が教えてくれたのは、全員が“ある事件”に繋がっているということ。」

「その事件が、私たちをここに引き寄せた鍵なんだ。」


全員の視線が彼女に注がれる。


「事件…それは何だ?」

ユウスケが問い詰める。


「まだ断片的だけど、私たち全員がその事件の片側に関わっている。」

アイリの声が震えながらも続く。「操られたのは、きっとそこから…。」


残り時間5分:結論の選定

アキラが立ち上がり、全員を見回す。


「時間がない。これ以上は迷っていられない。全員の記憶を基に、一つの結論を出す。」


サクラの挑発

「でも、必要?」

サクラが不敵な笑みを浮かべる。「だって、結論なんて出しても無駄じゃない?」


アキラの一喝

「ふざけるな!」

彼の声が鋭く響く。「もうこれ以上、誰かを犠牲にするわけにはいかない!」


全員が緊張に包まれたまま、結論を導き出す瞬間が迫る。


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